中国とはどんな国家なのか その4 軍事力の巨大な闇
Japan In-depth / 2021年7月31日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「中国軍部の活動の透明性」把握は安全保障にとって重要。
・中国側の情報公開は不完全。外国研究機関が健闘も、なお情報不足。
・中国側の公開情報を長期間精査して明らかになる領域もある。
中国という国家の透明性についての報告はいよいよ軍事力に光を当てる。
中国の軍事力とか軍事態勢といえば、超大国のアメリカにとってもとくに重大な関心事である。日本の安全保障にとっても中国の軍事力は直接の脅威となっている。なにしろ日本固有の領土である尖閣諸島を軍事力を使ってでも奪取する方針を宣言しているのが中華人民共和国であり、その最大の手段が軍事力なのである。
中国の軍事力といえば、その主体は人民解放軍である。その実態は外部では知られざる部分が多い。巨大な闇が存在するといえよう。
中国の強大な軍事力はその表面と内面ではどこがどれほど異なるのか。この疑問の答えは一重に中国軍部の活動の透明性にかかわってくる。
ヘリテージ財団の「中国の透明性報告」のさらなる紹介である。
軍事についての記述の骨子は次のようだった。
【軍事】
軍事問題、諜報活動、国内治安維持対策などを含む国家安全保障の領域は民主的で開放された国家でも、不透明な部分が多い。まして中国のような全体主義国家となると、その種の情報へのアクセスはきわめて限られてくる。
だが中国の軍事について知ることは他の諸国にとって非常に重要である。自国の安全保障に直接の影響を与えてくる対象だからだ。だから中国の軍事の現状や傾向を知ることは欠かせない。
▲写真 広西チワン族自治区南寧市で行われた反テロ演習の様子(2020年11月04日) 出典:Photo by TPG/Getty Images
中国当局は軍隊や治安部隊についての情報を公開することもある。だがその公開の方法は不完全であり、最重要な部分は隠してしまう。
中国人民解放軍も過去20年ほど国防白書を発表してきた。この白書は人民解放軍の各部門や軍事戦略指針、積極防衛、軍事動員制度などについても触れていた。1年おきに刊行されるこの国防白書は人民解放軍の軍事ドクトリンや軍事思考の変遷について公式には最も権威のある情報源だといえよう。
だがこの白書は世界最大の軍隊である人民解放軍の軍事予算という本質的な事柄など最重要な部分についてはほとんどなにも明らかにしていない。中国の公表された国防予算は2019年には1780億ドルだったが、その内訳、つまり陸海空の各軍にどう配分されたかという内訳はいまだかつて公表されたことはない。軍事の研究、開発、宇宙関連、生物兵器研究など具体的な軍事活動に費やされた経費の額も一切、秘密となっている。
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