五輪・スポーツの描かれ方(上)忘れ得ぬ一節、一場面 その5
Japan In-depth / 2021年7月31日 23時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・漫画『三丁目の夕日』や映画化作品、小説『江分利満氏の優雅な生活』に感じる昭和30年代。
・1964年東京五輪開催当時、日本人はみんな上を向いていた。
・2020年東京五輪は、このままでは「史上最悪の大会」となりかねない。
もう何年も前の話になるが、少林寺拳法連盟の若手(1980年代生まれ)職員から、妙な質問を受けたことがある。
「信吾さん(少林寺ではこう呼ばれている)の子供時代というのは『ぼくの夏休み』とか、あんな感じだったんですか?」
そういうタイトルのRPG(ロール・プレイング・ゲーム)があることくらいは知っているものの、試したこともないので答えようがなかったが、まあ質問の趣旨は分かったので、結局こう言ってやった。
「いや、俺の原風景というのは『三丁目の夕日』という漫画なんだよね」
すると彼の方では、その漫画を知らないという。昭和30年代の東京を描いたノスタルジックな漫画だと説明したところ、
「今度、漫画喫茶で読んでみようかな」
だと。まったく近頃の若い者は。ゲームばかりしてないで漫画くらい読め!
……という話ではなくて。
西岸良平の代表作のひとつで、小学館『ビッグコミックオリジナル』誌上にて1974年から連載されている。設定は昭和30年代。都内の架空の町「夕日台三丁目」で暮らす無名の人々の日常を描いた漫画で、当時の遊びとかヒットしたTV番組とか、まさしくノスタルジックな描写がたまらない。
2005年に『Always 三丁目の夕日』というタイトルにて、実写映画化された。
迷わず映画館に足を運び、期待にたがわぬ出来ではあったが、原作に忠実とは言えない。
主人公は三丁目で「鈴木オート」という自動車修理工場を営む一家なのだが、集団就職で上京してきて住み込みの従業員となる「六さん」が、なんと女の子になっていた。
演じたのは堀北真希で、この年『野ブタ。をプロデュース』というドラマでブレイクしたのだが、私はこの映画が瞥見だった。可愛らしい子だな、とは思っていたが、映画を見た数日後、たまたま週刊誌のグラビアを見ることがあって、
(こんな美形を、あんな田舎娘に仕立てたのか。逆にすごいな)
などと妙な具合に感心したことを、今でも覚えている。もったいなくも結婚・引退したが……という話でもないのだが、この映画はなかなか当たって続編も作られた。
3作目が『Always 三丁目の夕日'64』で、タイトルからも分かる通り、東京五輪の年の世相が描かれている。特に印象に残ったのは、三丁目の人々が、
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