中国とはどんな国家なのか その5 対外投資の表と裏
Japan In-depth / 2021年8月1日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・対外投資に関する中国政府の発表は、現実と大きく乖離している。
・海外の研究機関による、中国対外投資の追跡調査が拡大。
・防衛関連の対外投資、投資が受け入れ側に与える影響について、調査が必要。
さて「中国の透明性報告」は中国の対外投資に光を当てる。中国が世界各地に資金や技術を投入する活動である。
この領域は中国がグローバル・パワーとしてどんな経済活動を展開しているかを示す。その経済活動には政治や軍事までがからむことも多い。
この報告はその中国の対外投資の表と裏の相違に焦点を合わせているといえよう。
その要旨は以下のようである。
【対外投資】
外直接投資(FDI)とは経済協力開発機構(OECD)の定義によると、「一国に居住する投資者が他国にある企業体などに継続的で顕著な影響を及ぼす投資をすること」だとされている。
より広範に解釈すれば、対外投資には多数の形式があり、他国に新たな工場を建設すること、既存のビジネスを拡大すること、他国の関連企業に補助金を提供すること、他国の企業の株式を取得すること、他国の企業を合併あるいは取得すること、他国に合弁企業を設置すること、などがある。
水平的な対外投資とは一般的に他国の同種の産業界に資金を投入することを指す。たとえば中国の衣料小売店がアメリカに支店を開く場合、あるいは同種の小売店をアメリカで買収する場合などである。
垂直的な対外投資とはサプライチェーンに沿って上下するような投資を指す。たとえば衣料の小売店が他の国の衣料製造企業を買収して、その製品を自己の店で売るような事例である。
中国は開発途上国のいくつかでエネルギーその他のインフラ・プロジェクトに投資してきた。その国の産業基盤を改善して、経済効率を上げ、国民の生活水準や国の経済成長を引き上げるという目的をうたう種類の対外投資だった。
中国の投資や金融の集団はその種の対外投資では他の諸国からは経済的に、あるいは物理的にもリスクが高すぎるとみなされるようなプロジェクトにも資金を投入するというケースがかなりあった。
開発途上の世界ではインフラ建設には巨額の資金が緊急に必要であり、多くの場合、中国だけがその種の資金源だという事例も多い。だがその種の中国の対外投資で受け入れ側にとって「諸刃の剣」の結果をももたらすこともある。投資の利益が受け入れ側の少数のビジネス・エリートとか指導層、あるいは中国企業側だけを潤し、一般には及ばない、という場合も多いのだ。
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