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中国とはどんな国家なのか その5 対外投資の表と裏

Japan In-depth / 2021年8月1日 19時0分

中国の大規模なインフラ建設プロジェクトは国際的な財政基準や技術基準を満たさず、透明性に欠けるいう点を頻繁に批判されてきた。無責任な債務慣行を推進するという批判だったが、その批判には根拠があった。





たとえば中国政府が推進する「一帯一路」構想には受け入れ側の専制国家のエリートたちが勝手に選んだプロジェクトが多いケースがあり、一般国家で選ぶときに根拠とする国際基準には合致しない場合が多々だった。





一帯一路のこうした暗闇の部分には不良債権、不履行公約、不健全経済、無益無用のプロジェクトなどが多数、隠されてきたのだ。中国の対外投資はこの種の経済的に好ましくない結果をもたらしただけでなく、戦略的にみても有害な結果を生んだ実例もある。









▲写真 「一帯一路」国際会議の翌日、握手をする中国の習近平国家主席とスリランカのラニル・ウィクラマシンハ首相(2017年5月16日) 出典:Photo by Damir Sagolj-Pool/Getty Images





中国政府は貿易や投資に関する統計を国家統計局や商務省などを通じて定期的に発表する。しかしこの種の公式経済統計は中央、各省、各地方のそれぞれのレベルで中国共産党の利益に資するように操作され、改ざんされることも多いのだ。





対外投資の統計は中国政府にとってこの種の国内経済データの操作はより難しくなる。投資先の相手国がとくに先進経済だと、中国からの投資の実態もより厳しく点検されるからだ。





だが中国政府は対外投資で新たな計画を多数、発表するが、そのなかでは延期されたり、中止となる計画もかなりある。その場合に中国側はその延期や中止を発表しないことが多いのだ。その結果、公式の統計は実態を反映しないことになる。





近年は中国の対外投資を追跡調査する民間での試みがアメリカだけでなく、他の諸国でも劇的なほど拡大してきた。中国の対外投資の統計を細かく追って、その内容や意味を分析する作業である。





こうした追跡調査の機関の急増はやはり2000年代中ごろから2018年にいたる期間の中国の対外投資の大拡大の結果だった。中国の対外投資へのこの顕著な注視はとくに2013年の一帯一路構想の発表以降にその投資の流れが地政学的な特徴をも示すようになった結果でもあった。一帯一路が動かす資源の急増は単なる経済的な意味を越える意義をも持つようになったのだ。





一帯一路は習近平主席の記念的なプロジェクトとなり、2017年には中国の憲法にも刻まれた。しかしそれ以降、一帯一路は国際的な反発を広範に受けるようになった。ここ数年ではさらに中国の対外投資全体の衰えとともに、一帯一路は劇的な後退をみせるようになった。





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