五輪・スポーツの描かれ方(下) 忘れ得ぬ一節、一場面 最終回
Japan In-depth / 2021年8月3日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・「ドーハの悲劇」のように、映画・小説よりも現実の試合の方がドラマチックであったりする。
・五輪は「平和の祭典」だが、スポーツの試合の高揚感からナショナリズムを誘発する例もあり、戦争の代替手段となったことも。
・オリンピックと並行して行われるべきパラリンピックを中止するなら利権のための開催だと世界に公言するに等しくなる。
事実は小説よりも奇なり、と昔から言うが、私見スポーツもまた、映画や小説より現実の試合の方が、はるかにドラマチックであったりする。
たとえばサッカー。
『勝利への脱出』という映画がある。公開は1981年。第二次大戦中、ナチス・ドイツ軍の捕虜となっていた連合軍兵士が、ドイツ軍の選抜チームと「親善試合」を行うことになるのだが、そのどさくさに脱走を試みる、という話だ。
▲写真 映画『勝利への脱出』の一場面 出典:Photo by John Bryson/Getty Images
主人公はシルベスター・スタローンが演じたが、あの「王様」ペレをはじめ、アルゼンチン、ノルウェー、イングランドなどのプロ選手が捕虜役で出演し、試合のシーンでは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる。とりわけ、後に清水エスパルスの監督も務めたオズワルド・アルディレス選手(アルゼンチン)が披露したヒールパスが圧巻だった。
普通、ヒールパスとは読んで字のごとく踵でもって後方にパスを出すのだが、彼は映画の中で、全力疾走しながら踵でボールを蹴り上げ、自分の頭を超えて前方にパスを出すという離れ業をやってのけたのだ。すげぇ、と思わず呟いてしまった。
しかしながら、よくも悪くもドラマチックという点では「ドーハの悲劇」に及ぶところではない。
1994年ワールドカップ米国大会出場をかけたアジア最終予選。イラク相手に、勝てば初出場が決まる試合。すでにロスタイムに入り、日本が1点をリード。イラクがコーナーキックのチャンスを得たが、ここを守り切れば……
イラクはなんと、意表を突くショートコーナー。直接ゴール前に蹴りこむのではなく、短いパスを出して相手ディフェンスを崩しに行く戦法だが、残り時間が1分もない時にこれをやるとは……
一説によれば、イラクのキッカーは時計を背にしていたため、残り時間を正確に把握できていなかった。いずれにせよ、カズ(三浦知良選手)が必死でクリアしようとするが、わずかに及ばず、かわされてしまう。そしてヘディングシュート。キーパー松永成立選手の指先をかすめ、サイドネットにボールが突き刺さった。
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