英霊と呼ばれない女学生たち 「戦争追体験」を語り継ぐ その3
Japan In-depth / 2021年8月20日 11時0分
と言うのは、20年以上も前のことで、まだ存命中の生存者が幾人もおり、試写会に招待された様子を報道番組で見たからである。
集中砲火の中、助けを求めることさえできず、それでも転びかけた友人の手を引いたりしながら女生徒たちが逃げまどうシーンで、生存者の婦人たちが一斉にハンカチで顔を覆った時には、私自身も目頭が熱くなったが、同時に、こんな理不尽なことがあってよいものかと、言い知れぬほどの怒りがわいてくるのを抑えることができなかった。
ほんの半世紀ばかり時代がずれていたなら、JK(女子高生)と呼ばれて青春を謳歌できたはずの彼女たちが、このように戦火の中で若い命を散らしたのだ。
さらに言えば、彼女たちは「英霊」ではないので、神社に祀られることもない。神社に祀ることにどれほどの意味があるのか、という議論はひとまず置いて、ある意味、戦争の最大の被害者だと言える女学生たちに、国家はなにひとつ報いようとしていない。
沖縄ではまた、男子中学生(旧制なのでおおむね14〜17歳)も防衛戦に駆り出された。「鉄血勤皇隊」と称する部隊がそれだが、こちらはタテマエとしては志願制で、学校で少年兵部隊を編成する旨の説明を受けた後、志願する者は同意書に親の判子をもらってこい、などと言われて、ひとまず家に帰されたそうだが、軍国主義の時代にあって、お前は跡取りだから行くな、などと言える親がいただろうか。
彼らもまた、弾薬の運搬や陣地構築の手伝いが任務だとされていたが、米軍は洞窟陣地や塹壕を見つけると、端から火炎放射器で焼き払う、という戦法をとったため、やはり多くの犠牲者を出した。
これまた志願制でもって(!)、爆薬を抱えて敵戦車の車体の下に飛び込む特攻作戦で散った者も、少なからずいたとされる。
今年も、終戦記念日には一部の閣僚が靖国神社に参拝したり、英霊の声にこたえるためと称して、憲法改正を訴える集会が開かれたりした。
私は前々から、日本国憲法を一字一句変えてはならない、との立場ではないと公言してきた。とは言え、それはあくまで、憲法論争をタブー視することなく、是々非々の立場でとことん論じ合うのがよい、と考えればこそである。
国民にまたしても「祖国を守る義務」を押しつけ、自分の意思を関わりなく戦争の犠牲者になる人を再び生み出す、そのような可能性をはらんだ憲法改正論議には断じて与しない。これが、戦争犠牲者に対する私なりの、せめてもの供養だと思う。
(その1、その2)
トップ写真:「零戦」 出典:Photo by US Navy/PhotoQuest/Getty Images
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