アフガニスタン崩壊の国際的な意味
Japan In-depth / 2021年8月20日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・バイデン大統領の楽観視が招いた、タリバンによる首都カブールの制圧。
・ベトナム戦争のサイゴン陥落を彷彿とさせる米軍の撤退。
・米国の防衛制約の一方的破棄による同盟国の安全保障上の懸念の増幅。
アメリカのバイデン大統領のアフガニスタンに関する決定は同大統領への自国内での広範な非難だけでなく、国際的にも深刻な課題をいくつも提起した。同大統領は8月16日、休暇先からホワイトハウスに戻り、全米向けの演説で今回の決定の理由などを説明したが、この演説にも与党の民主党側からも批判が起きた。バイデン政権は登場して半年ほど、最大の危機を迎えたといえそうだ。
しかしその危機には日本にとっての教訓や意味があることも忘れてはならない。
アフガニスタンではバイデン大統領がつい数日前まで予測していた事態とはまるで異なり、反政府のイスラム過激派タリバンが一気に首都カブールを制圧した。アメリカが20年ほども支援してきたアフガニスタン共和国の政府も軍隊もタリバン側に降伏する形で崩壊した。
この事態をバイデン大統領の責任として追及する声は連邦議会でも民主、共和両党に共通していた。とくに同大統領が実際の破局の直前まで事態を楽観して、8月13日から暑中休暇をとり、近郊の大統領山荘キャンプ・デービッドで静養していたことへも非難の矢は向けられた。
民主党寄りの国際戦略専門家のイアン・ブレマー氏は今回の事態を「ここ数十年で最大の外交政策の失敗であり、その悪影響はグローバルとなる」と総括した。
そのうえでブレマー氏はバイデン政権が情報収集、調整、立案、意思疎通の4分野で失敗したと述べ、アフガニスタン国軍の能力の過大評価、同盟諸国との協力の失敗、緊急計画の欠落、アメリカ国民への説明の欠落などを具体的に指摘した。
実際に国際協調や同盟諸国との連携を強調してきたバイデン大統領が今回はまったくの単独で進めたアフガニスタン完全撤退の実行であり、ブレマー氏は「これこそ一国主義だ」とも批判した。
アメリカ国内では今回のアフガニスタンの崩壊とアメリカの撤退や現地住民のパニック状態をベトナム戦争最後のサイゴン陥落に重ねる評論が多くなった。首都カブールの市民の多くがタリバンの支配の復活を恐れ、とくにアメリカに協力してきた人たちは反米のタリバンからの報復を心配して、国外に脱出しようとする。
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