戦争映画と軍歌について 「戦争追体験」を語り継ぐ その4
Japan In-depth / 2021年8月24日 13時6分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・映画と音楽は斬っても切れない関係にある。
・戦争映画にはよく「マーチ」が使われる。
・歌で描かれる奉天会戦と、歌では描かれない戦争の事実。
お笑い芸人(などと紹介するまでもないほどの有名人だが)の松本人志が、
「この時期、子供には戦争映画を見せる」
と発信して話題になった。当人は、ハッピーエンドでない戦争映画は「個人的には大嫌い」だとしつつも、子供に見せるのは「親の義務だからね」との考えだそうだ。
私は彼と違って、戦争映画は好きでよく見る。ただ、前々から繰り返し述べているように、戦争や軍隊に心惹かれる、といったことではない。あくまでも、戦場という極限状況だからこそ見ることができる、人間の本性やそこから生まれるドラマを見たいのだ。
いずれにせよ、彼のように影響力のある人が、こうした態度で次世代に接してくれていることは嬉しく、また心強い。
話は変わるが、映画と音楽はいわば斬っても切れない関係にある。チャップリンの無声映画でさえ効果音やBGMがちゃんと流される。
これを戦争映画に数えてよいか否か疑問だが、第二次大戦の直前、ナチス・ドイツに併合されたオーストリアを舞台とした『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)など、いくつもの楽曲を世界に広めた。映画を見たことがない人でも「ドレミの歌」くらいは知っている、というように。
特に洋画は、多くの名曲を世界中に広めているが、戦争映画も例外ではない。
たとえば『戦場にかける橋』(1957年)という映画は、日本軍の捕虜になった英軍将校(アレック・ギネス)と、収容所を管理する日本軍の将校(早川雪舟)が橋の建設作業を通じて、いつしか心を通わせる。しかし、脱走した米軍捕虜がその橋の爆破を試みる……という話だが、昭和の小学生にとっては、映画の中で捕虜たちが口笛で奏でる「クワイ川マーチ」こそ、行進曲の定番だったのだ。
朝礼で校長の長い話を聞かされた後、この音楽が流れ、それこそクラスごとの「分列行進」で教室に向かうのだが、この曲について知ったのは、だいぶ後になってからの話で、なるほど日本の学校教育は捕虜収容所並みか、などと妙な感想を抱いたのを覚えている。
こちらも小学校時代の思い出だが、音楽の時間に「クラリネットこわしちゃった」という歌を教わった。
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