菅首相、なぜ任期満了解散にこだわる
Japan In-depth / 2021年8月29日 12時29分
保守系無所属候補の追加公認でかろうじて危機をしのいだものの、三木の奮闘もここまで。その退陣表明で、長い三木おろしは幕を下ろした。
■自民党低落の契機、首相は再来恐れる?
これが戦後唯一の任期満了選挙での自民党敗北の顛末だ。
すでに、「遠い日の思い出」だが、思えば、これが自民党の長期低落のはじまりではなかったか。
三木退陣の後は、福田内閣が発足。大平氏との間で「2年で交代する」という密約があったといわれるが、これは反故にされ、福田氏は昭和53年の総裁選に再選出馬。しかし大平氏に一敗地にまみれる。
老境に差しかかった人は覚えているだろう。「天の声にもヘンな声がある」と造語の名人、福田氏が自嘲気味に漏らしたのはこのときの敗北会見だ。
現職総裁を破って登場した大平政権は、54年秋の総選挙で「一般消費税」導入を掲げたことがあだとなって敗北。首相と、退陣を求める勢力が対立。「40日抗争」と呼ばれる政争に発展した。
翌年5月には大平内閣不信任案可決。これをうけた衆院解散(ハプニング解散)、初の衆参同日選挙、そのさ中での大平氏急死、選挙は大勝という劇的な展開をたどる一方で、党勢は確実に衰退していった。
中曽根、小泉、安倍の長期政権は登場したものの、その後は、それをのぞくと2年程度の短命政権の登場、退陣が続いた。
平成5年夏、宮沢喜一首相の下で戦った総選挙で敗北、下野を余儀なくされて反自民の細川連立内閣の登場を許したのはなお記憶に残る。
菅首相そのひとは、「ロッキード選挙」当時は、はじめて議員秘書として政治の道に足をふみいれたころだろう。権力闘争の世界をまじかで眺めながら、解散権を行使できない首相がどういう末路をたどるかを強く感じたはずだ。形だけの解散であっても、首相が、それにこだわる理由は、こうした経緯を考えればよく理解できよう。
■師走近くまで選挙先送りが可能
さて、首相がなりふりかかまわず解散を断行するにしても、総裁選、コロナ対策などの日程とどう組み合わせるのか。
実務的な話になるが、選択肢については、すでに多くの報道がなされている。
夏以降の爆発的なコロナ感染者増加によって、9月5日のパラリンピック閉幕直後に解散・総選挙、その後に総裁選という首相の当初の目論見は潰えた。
総裁選は9月29日、解散、総選挙はその後になる見込みだが、こうなった以上、首相にとって、選挙は可能な限り時間を置くのが得策だろう。ワクチン接種による効果が出始めて感染者減という好ましい効果を期待できるからだ。
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