「エシカル」を通じて家庭科の新しい可能性を
Japan In-depth / 2021年9月5日 21時0分
CLOUDYの工場はケニアやガーナなど西アフリカを中心に7か所あり、貧困層の女性や障がいを持つ人の雇用を生み出し、さらに収益で現地に学校を作り、雇用と教育で持続可能な未来を作っている。こうした取り組みを学ぶことで、貧困や人権問題などの社会課題や、多様な価値観への理解を深める。
▲写真 生徒の作品の前で ⒸJapan In-depth編集部
衣服の生産・消費サイクルを通じて地球環境に与える影響についても考える。現在のファッション業界では、低価格で品揃えを目まぐるしく変えることで、消費者に衣服の頻繁な買い替えと廃棄を促す「ファストファッション」の業態が主流であり、需要量を大幅に上回る衣服が生産されている。国連貿易開発会議によれば、ファッション業界は世界で2番目に環境負荷の高い産業だという。
こうした社会課題をただ知るだけでなく、その解決策についても学ぶ。例えば、近年注目されている「アップサイクル」。不要になった製品を再加工することで、従来よりも付加価値の高い製品を生み出すことを指す。各自が家から持ち寄った不要な布地と使用済みの麻袋をミシンで縫い合わせ、オリジナルのバックを制作するなど、授業で実際にアップサイクルを体験する。
生徒からは授業後「授業を通して環境という視点がとても大事だという考えに変わった。今までは『環境が大事だ』と言ってもそこまでの危機感はなくて、優先順位が後だった。でも、少しずつ『今の環境を変えなくてはならない』という考えになった」という声が上がった。
▲写真 商品化された生徒たちの作品 ⒸJapan In-depth編集部
■発信を通じてより深い学びへ
葭内さんが授業で大事にしているのは、生徒に学んだことを発信してもらうことだ。リーフレットやホームページを作成し、学びを発信する。
「教員の講義や調べ学習などで知識を得るだけではなく、何か人に伝えたり、発信したりする時に(学びが)定着すると思います」
さらに、お茶の水女子大学と附属校による連携研究組織「エシカルラーニングラボ」の代表として、エシカル教育を幼・小・中・高・大と一貫して行う取り組みを進めている。高校1年次では児童労働に関するプレゼンテーションを作成し、小学5年生へ訪問授業を行う。高校2年次では「エシカル」をテーマに授業を計画し、中学1年生へ授業を行っている。
葭内さんは「若い頃からエシカルについてスパイラルに繰り返し学ぶことが大切です。アクションにつなげるのは高校生が適していますが、マインドセットを育てるのは早ければ早い方が良い。その時にせっかく同じキャンパス内に附属校があるので、高校生から発信して教える、というのを上手く使えたらなと思っています」と述べた。そのうえで「『幼稚園生はまだ分からない』と言う声もありますが、小さくても教えるとちゃんと理解します」と述べ、幼少期からエシカルな意識を育てる重要性を指摘した。
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