英国もソ連も追い出した(中)「列強の墓場」アフガニスタン その2
Japan In-depth / 2021年9月20日 19時0分
自称1957年生まれ。自称とは何事か、と思われた向きもあろうが、これは致し方ないのだ。彼の出生地はサウジアラビアだが、わが国のような整備された戸籍制度など存在しない。さらには1994年に同国の国籍を剥奪されているため、パスポートや出生証明書を確認する手立てもない。学歴も同様で、経営学の学位を持っているとも、大学中退であるとも言われる。
▲写真 オサマ・ビン・ラディン(1998年05月26日) 出典:Photo by CNN via Getty Images
レバノンに留学までしたのに、そこで西洋風の若者文化(ディスコなど)を知り、遊びほうけて学業などそっちのけだった、などともっぱら言われているが、こんな話をあまり書き立てると。危険なことになるかも知れない。いずれにせよ、20代の後半になって、ようやくイスラム神学を真剣に学ぶようになったと考えられる。
父親はイエメンからの移民で、一介のレンガ積み職人(資料によってはタイル職人とも。おそらく建築現場の仕事を転々としていたのだろう)から身を起こして、サウジアラビア屈指のゼネコンを作り上げ、大富豪になった立志伝中の人物である。
彼のオサマ(ウサマとも表記される)という名は、アラビア語で獅子の意味。アラビア語圏ではポピュラーな男児名であるらしい。
イスラムでは第4夫人まで認めているが、彼の父親はなんと累計22人の女性と結婚・離婚を繰り返し、54人の子供をもうけた。オサマは10番目の妻との間に生まれた、17番目の子供である。
ともあれ彼は、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻したとの報に接した直後に、巨額の資金と多数の重機などをパキスタンに持ち込み、ソ連軍に抵抗するムジャヒディーン(戦士)たちを支援する活動に乗り出した。資金については多くを語るまでもないが、重機は軍事的に大きな意味を持つ。これがあったおかげで、ムジャヒディーンたちはアフガニスタンとパキスタンにまたがる山岳地帯に多数の洞窟陣地を短期間で築くことが可能となり、圧倒的な機甲戦力を持つソ連軍に対して、しぶとく抵抗するようになったのである。
さらには、彼自身アラブ人ムジャヒディーンの一隊を率いて、ソ連軍相手の戦闘を繰り返すようになる。とりわけ1987年4月のジャジの戦闘では、ソ連軍を敗走させたとさかんに吹聴して、かつアラブ諸国の一部マスメディアがこれを鵜呑みにして書き立てたため、一躍英雄視されるようになった。
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