インドネシア、高速鉄道建設に国費投入
Japan In-depth / 2021年10月25日 23時48分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・インドネシア、高速鉄道計画で約340億円の国費投入を可能にする改正大統領令を公布。
・ジョコ大統領、電気自動車計画でも中国依存の方針示す。
・過度の中国依存に国民から批判の声も。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は10月6日、首都ジャカルタと西ジャワ州のバンドン間(約150キロ)で現在建設が進む高速鉄道計画で予定していた費用が膨張したことを受けて4兆3000億ルピア(約340億円)の国費投入を可能にする改正大統領令を公布したことを明らかにした。
同鉄道計画では2015年に中国が受注した当時、ジョコ・ウィドド大統領は「インドネシア政府に財政負担は求めないという中国の受注条件」をあげて国費を使わない方針を公表していた。
このため、今回国費投入という事態に陥ったことからジョコ・ウィドド大統領に対する責任追及の動きも出ようとしている。
同鉄道計画は当初、日本と中国による激しい受注競争が繰り広げられ、安全性と円借款による低金利の融資などを前面に出した日本に対し、低コストの建設費用や短期の工期、インドネシア政府に財政支出や債務保証も求めないことなどを主張する中国が最終的に受注するという経緯があった。
さらに日本側がインドネシアに提出した事前のフィージビリティスタディの報告書が中国側に漏れたのではないか、との疑惑が出るなど日本にとっては「いわくつき」の鉄道計画だった。
受注に成功した中国側は中国鉄建(CRCC)がインドネシアの国有企業連合と合弁で「インドネシア中国高速鉄道会社(KCIC)」を設立し、中国開発銀行を通じた資金提供で建設計画は2016年に着工した。
しかしインドネシア側による建設予定地の土地収用がスムーズに進まないことなどから工期が大幅に遅れ、当初計画の2019年完工が2021年にずれ込み、その後コロナ禍の影響もあり2022年末までの完工を現在は目指している。
▲図 高速鉄道のイメージ 出典:KCIC
■ 膨張し続けた建設費用
工期の遅れに伴い、建設費用も年々膨張の一途をたどり、総事業費約86兆2600億ルピアとの当初見積もりは、約113兆2500億ルピアにまで膨れ上がった。その結果、ジョコ・ウィドド政権はついに発注当時の思惑が外れて国費を投入せざるを得なくなった。
1期目のジョコ・ウィドド政権で日本の受注を期待する閣僚らを抑え、中国への受注を裏で画策したとされるリニ・スマルノ国営企業相は2019年からの2期目の政権では閣外に去り、現政権で当時の判断の責任を負うべきは最終決断をしたジョコ・ウィドド大統領しかいない。
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