小室さんの論文コンテスト優勝はどれくらいすごいのか
Japan In-depth / 2021年10月27日 10時54分
今回、小室氏が受賞した毎年恒例の学生論文コンテストは、米国ではよくある学生向けコンテストのひとつであり、受賞作が掲載されるジャーナルの「NY BUSINESS LAW JOURNAL」も、尊敬を受けるアカデミックなものではなく、実務的かつ実用的な情報が中心だ。引用回数が多い査読誌の「イェール・ロー・ジャーナル」や「ハーバード・ロー・レビュー」など高級ロー・ジャーナルとは比較にならないことに留意する必要がある。
受賞は学生個人としては立派なことには違いないが、法学上の新説を打ち出したとか、憲政上の定説をひっくり返したなどの学問的な価値があるとは言えず、テレビや新聞で大々的に全国ニュースとして扱うレベルの話題ではない。
ちなみに現在首都ワシントンで働く筆者の娘は、学部生として多くの賞や奨学金を得たが、それらは経歴書においては「トッピング」に過ぎず、採用時に最も重視されたのは、「何を、どんな目的意識で完遂してきたか」「社会にどれほどのインパクトがあり、将来的可能性はあるか」であった。競争相手にはできない結果を常に出さねばならない重圧であり、学生向け論文コンテストひとつの受賞で、「実力がある」「おめでたい」「バッチリ」などと浮かれていられるような甘い世界ではないのである。
■ 論文の法学上の価値
今回の受賞作である「ウェブサイトへの接続におけるコンプライアンス問題と起業家への影響」は、上記ジャーナルの2021年春号に掲載されているとのことだが、ニューヨーク州弁護士会のビジネス法部門の当該サイトにはまだアップロードされていないようで、アカデミックな出版物の検索エンジンであるWorldCatでもヒットしなかった。
だが小室氏は、同誌の2019年夏号に掲載された論文で、昨年の同じ学生論文コンテストの2位に入賞している。ウェブ上の資金調達であるクラウドファンディングにおける様々な問題について簡単にまとめた数ページの「Challenges and Implications for Potential Reforms of Crowdfunding Law for Social Enterprises」は、ウェブ上で閲覧が可能だ。今回の論文はアクセスできないため、この前回の論文のアカデミックな価値を考えてみたい。
結論から述べると、「NY BUSINESS LAW JOURNAL」の学生論文コンテスト選考基準である、①読者の興味に合致すること、②タイムリーさ、③独創性、④リサーチと論文の質、⑤明解さと簡潔さに関し、小室氏の論文が条件を満たすのは恐らく読者アピール、時宜を得た話題、わかりやすさと簡潔さのみで、最も重要な要素である独創性や質が伴っていないように見える。
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