アラブの石油王と結婚する方法 王家の結婚について その4
Japan In-depth / 2021年11月2日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・王族との結婚、第一のハードルは宗教。
・キリスト教やユダヤ教の信者である女性は、イスラムに改宗せずとも信者の男性との結婚が認められる。
・反対に、ユダヤ教やキリスト教では、ムスリムを異教徒と見なし、改宗しなければ結婚を認めない。
英国のマーガレット・サッチャー元首相が亡くなった際(2013年4月8日没。享年87)、映画で彼女の役を演じた女優のメリル・ストリーブが、こうコメントした。
「プリンセスになることだけが女の子の夢ではないということを、彼女は自分の人生をもって知らしめた」
さすがの名台詞ではあるが、裏を返せば、多くの女の子はプリンセスになることを一度は夢見るものだという認識が、彼女の中にもあったのだろう。
前回『シンデレラ』を引き合いに出したのも、話がここにつながってくるので、権力がどうのこうのといった議論とは関係なく、豪華な衣装をまとって馬車で舞踏会に出向くといった生活に憧れる気持ちには、おそらく国境も言葉の違いもないのだろう。
と言うのは、わが国にも『落窪物語』という、畳が落ちくぼんだような粗末な部屋での生活を強いられていた美女が、貴公子に見初められる話がある。継母からのいじめにあうという設定まで『シンデレラ』とそっくりだ。
作者はどこの誰とも知れず、あの『源氏物語』に先駆けた、本邦最古の女流文学ではないかとも言われている。
また、唐の時代に書かれた小説にも、同様の設定のものがあるそうだ。
さて、本題。
ヨーロッパの王侯貴族は、19世紀に起きた一連の市民革命によって、多くが権力や地位を奪われ、20世紀には、第一次世界大戦後にドイツ帝国、ロシア帝国、オーストリア=ハンガリー二重帝国、オスマン帝国が立て続けに崩壊した。
一方で、それまでオスマンの支配下にあった中東イスラム圏では、伝統的な部族社会が、そのまま王国や首長国を名乗って独立する例が相次いだ。この結果21世紀においては、人口や領土の広さの割に王族の数が多い国が中東イスラム圏に数多くある、という状況になっているのだ。
また、第二次世界大戦後は中東で油田の発見が相次いだため、かの地の王族と言えば、石油王とか大富豪とイメージ的に二重写しになったとも言える。
昨今このようなことを書くと、偏見だのジェンダーがどうのといったことを言われかねないが、そのリスクは引き受けるとして、プリンセスになりたい、という気持ちが、富に裏打ちされた安楽な人生への憧れと同根のものであるとするなら、石油王に見初められることを夢見る若い日本人女性がいても不思議ではない。
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