「メンバーシップ型日本を消去する?できる?しないと・・・」 続:身捨つるほどの祖国はありや11
Japan In-depth / 2021年11月12日 17時31分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
【まとめ】
・社員こそ会社のメンバーであり、株主は外部の人だという考えは、つい最近まで日本では常識だった。
・戦後の財閥解体で日本の株式会社制度は根本から変わった。日本のメンバーシップ型は歴史の一挿話に過ぎないのかもしれない。
・「失われた30年、どうする日本」。コーポレートガバナンスだけで解決は難しいだろう。なぜなら、勤労者、大衆の視点が乏しいからだ。
「世の中の圧倒的に多くの人々が、そういう実定法の思想の建前をまったく認識せず、労働者こそが会社のメンバーであり、株主こそ会社にとって外部の第三者だと思い込んでいる」(濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書2021年)
「そういう実定法の思想の建前」とは、「会社とはそのメンバーである株主の所有物であり、経営者とは株主の代理人として利潤の最大化に挺身すべきものであり、労働者とは会社の外部の第三者であって、雇用契約によって労働を提供し報酬を受け取る債権債務関係にあるに過ぎません」というものだと、濱口氏自身によって解説がされている。
濱口桂一郎氏とは、「日本的なメンバーシップ型と対になるジョブ型という言葉を造ったのは私自身です。」という方である(1頁)。
私は、その濱口氏が、現在形をつかって圧倒的に多くの人々の思い込みを説明しているという事実に、少なからざる衝撃を受けた。
会社法の世界に住む者にとっては、濱口氏のいう「建前」こそが当たり前だと考えられていると知っていたからである。
しかし、濱口氏の考えそのものは意外ではない。現実にも、私のまわりにいる多くの経営者はそう考えているのではないかと思うことがあるからだ。
つい最近、ある巨大上場株式会社の幹部レベルの方に入社年をうかがった。1989年という答えだった。そこで私は、
「では、株主のために働くぞ、と思って入社されたわけではなさそうですね?」と入社当時の思いについて質問してみた。
「考えもしませんでしたよ」という答えが返ってきた。
当然である。バブルの絶頂にあった巨大日本企業の従業員は、誰もが株主について、「外部の第三者」だと思っていたのである。従業員を社員といいかえ、その社員こそが会社のメンバーであり、株主などは外部の人だという考えは、つい最近まで日本では常識だった。
今は違う。
この本には、大塚万丈という名前が出てくる(270頁)。読者のなかにはその名をご存じのかたもあるに違いない。設立当時の経済同友会で活躍された方である。
この記事に関連するニュース
-
上場会社の社外取締役には「みちょぱ」を指名せよ 株主総会前に正しい企業統治とは何かを考える
東洋経済オンライン / 2024年6月1日 8時30分
-
NCホールディングス株式会社に対する株主提案及び同社取締役会意見に対する見解について
PR TIMES / 2024年5月31日 10時15分
-
他人事ではない「水原一平騒動」に経営者が学ぶ事 問題点はチーム大谷のガバナンス欠落にある
東洋経済オンライン / 2024年5月30日 10時0分
-
株式会社ウィザスに対する株主提案について
PR TIMES / 2024年5月25日 22時40分
-
モノ言う株主・丸木氏が語る「日本企業の経営問題」 見過ごされる「ガバナンスウォッシュ」とは
東洋経済オンライン / 2024年5月7日 20時0分
ランキング
-
1日本政府が防衛費を上げる前にやるべき3つのこと 陸自予算の削減、新戦闘機開発の中止、耐震改修…
東洋経済オンライン / 2024年6月2日 8時0分
-
2マイナカードの保管をめぐり口論…ビールジョッキで40代女性の顔面を殴打 まぶたから流血の女性「殴られた」傷害容疑の50歳男「間違いない」
北海道放送 / 2024年6月2日 9時3分
-
3街宣に「うるさい」言われ激高、通行人暴行疑いで右翼団体構成員逮捕 付近では共産・田村委員長が講演予定
産経ニュース / 2024年6月1日 20時24分
-
4「ロケ地巡りできません」 Number_iのMVに登場する団地に何が
毎日新聞 / 2024年6月2日 9時0分
-
5〈元ウルトラマン俳優の今〉沖縄でバー経営も失敗、最高106キロに激太り…芸能界を辞めた本当の理由と「生きるためになんでもやる」境地に至った引退後11年の日々
集英社オンライン / 2024年6月1日 12時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください