「メンバーシップ型日本を消去する?できる?しないと・・・」 続:身捨つるほどの祖国はありや11
Japan In-depth / 2021年11月12日 17時31分
経済同友会が1947年に『企業民主化試案』を書く際の中心人物だった。
「そこに書かれた思想は戦後日本の根本思想となりました。」と濱口氏は言う(271頁)。すぐに忘れられてしまった本ではあっても、その「イデオロギーが全ての日本人の頭の中を支配するミーム(文化的遺伝子)となった。戦後日本社会の根本思想となりました。」(同頁)
全ての日本人である。私も、読者であるあなたも含まれることになる。我々そういう文化的遺伝子を持っているということらしいのである。
濱口氏は、その直前で「戦後日本社会における企業というものが、商法の想定する資本の結合体というよりも、生産活動に向けた経営者と労働者の人的結合と意識される」という表現も使う(269頁)。
どうも日本は違うということらしいのである。
「『企業民主化案』こそ戦後日本社会の設計図であったと言えるのではないでしょうか。」とまで濱口氏は言う(272頁)。
実のところ、私はそういうミームなるものがあると言われても、さしたる違和感はない。むしろ、そうなのだろうなと思うのである。
なぜなら、戦後の財閥解体で日本の株式会社制度は根本から変わったと考えているからである。従業員中心の協同組合になって、株主は株の持ち合いを通じて棚上げされた。そうやって日本は戦後の復興を遂げ、高度成長を謳歌し、石油ショックを克服した。その間に世界第二位の経済大国にもなってみせた。
だが、85年のプラザ合意と構造協議をアメリカに強制され、バブル経済となり哀れにも崩壊した。
その結果、日本は、今、失われた30年にあえいでいる。
「どうする日本」と叫びながら、私は、コーポレートガバナンスは有効だが、それだけでは解決は難しいだろうと感じ始めている。なぜならば、そこには、勤労者、大衆の視点が乏しいからである。
会社は雇用のためにある社会制度である、というのは、弁護士である私の経験から生まれた実感である。
その「雇用システムの根っこから物事を見直すと、かくも世の中の見え方が代わってくるのか、という驚きの体験が待っている」本がこの本だと、濱口氏は「はじめに」で語られる(ii頁)。
しかし、私は驚かなかった。ただ、いろいろな疑問について諄々と教えていただいた気がしている。コーポレートガバナンスだけでは、小熊英二氏の説く社会的合意を変えていくには不足していると感じ始めていた私にとっては、まことにありがたい、素晴らしい導き手である。
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