風を「読み違えた」マスメディア(下)似て非なる日英「二大」政党制 その2
Japan In-depth / 2021年11月16日 23時0分
個別具体的な候補者の当落などは報道に譲るとして、私が今回テーマとして取り上げたかったのは、このように選挙において風が吹くとか吹かないとか、あるいはメディアが風を読み違えるといった現象は、果たして日本独特のものなのか、ということである。
結論から先に言えば、そのようなことはない。
私は『これが英国労働党だ』『英国議会政治に学べ』(いずれも新潮選書)という本を書いており、近代英国政治に関しては相当よく調べてきたと自負しているが、かの国では、選挙前の世論調査とは裏腹の結果が出ることなど、少しも珍しくない。
これはどういうことかと言うと、英国でも、当日の気分次第で最終的な投票行動を決める、といった有権者が相当数いる上に、とりわけ保守党にあっては、
「今度は危ない。負けそうだ」
という、いわば逆宣伝をすることで選挙運動の現場を引き締める、という手法が伝統的に用いられているという理由が指摘できる。
たとえば直近、具体的には2019年の総選挙だが、直前まで
「保守党の過半数確保は微妙な情勢」
であると報じられていた。この時はEU離脱の是非を問う、という明確な争点があったわけだが、これに先立つこと3年、2016年に実施された国民投票において、離脱派が勝ちを博していたのだが、僅差も僅差、(離脱)賛成51%、反対49%だったのである。
しかし結果は、保守党の圧勝。
▲写真 2019年英総選挙で自身の保守党が勝利したことを受け、会見に臨んだボリス・ジョンソン首相(2019年12月13日) 出典:Photo by Chris J Ratcliffe/Getty Images
私自身、この連載で述べたが、ジョンソン首相は速やかな離脱を掲げ、強いリーダーシップの持ち主であると印象づけるのに成功したが、対する労働党のコービン党首は、あろうことか、再度の国民投票などという「灰色決着」を掲げたのである。
これにはEU残留を訴える勢力までが失望し、自由民主党(英国にもある)や緑の党など、もともと親EUの立場をとっていた政党の候補者に票を集中するように呼びかけた。
我が国では英国の議会政治について「保守党・労働党の二大政党制」ということが言われるが、これは事実ありのままではない。両手の指でも数え切れないほどの政党が議席を持っているし、総選挙の都度40あまりの政党が候補者を立てている。
それではなぜ、二大政党制と広く信じられるようになったのか。これについては、選挙制度が大きく関わっているので、英国の自由民主党の問題も含めて、次回できるだけ詳しく観て行きたいと思う。
この記事に関連するニュース
-
ニュースの核心 自民・公明・維新・国民〝4党連立〟次期衆院選で大再編か 健闘の日本保守党「全国なら勝利確実」 立民が政権交代に至らない理由
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月4日 10時0分
-
なぜ自民も、維新も、小池氏も勝てなかったのか…衆院3補選が示す「自民にすり寄る野党勢力」の終わり
プレジデントオンライン / 2024年5月2日 17時45分
-
ニュース裏表 平井文夫 政権交代が現実味 自民と立民が〝維新の取り合い〟に…菅氏、野田氏の両元首相がキーマン 日本に「3大政党制」誕生か
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月2日 15時30分
-
衆院補選で示された「政治への怒りと諦め」…与野党ともに求められる変革 豊田真由子が読み解く衆院補選結果
まいどなニュース / 2024年5月1日 20時32分
-
東京15区は〝大波乱〟衆院3補選最終情勢 自民は岸田首相「派閥解消」裏目に 島根1区、細田前衆院議長の「弔い合戦」も大逆風
zakzak by夕刊フジ / 2024年4月26日 14時12分
ランキング
-
1ボート転覆→通報まで1時間超 群馬ラフティング・19歳死亡1年
毎日新聞 / 2024年5月5日 0時0分
-
2「遺書を書こうと思ったぐらい落ち込みました」日帰りハイキング→遭難4日目に20代女性が“絶望”を感じた意外な“ある出来事”
文春オンライン / 2024年5月5日 6時0分
-
3物価高でも値上げをしない「サイゼリヤ」。コスパ最強であり続ける“50年前から変わらぬ”姿勢とは
日刊SPA! / 2024年5月5日 8時53分
-
4仙台のホテル、バスケ部員12人病院搬送…秋田から遠征中の高校生
読売新聞 / 2024年5月5日 13時47分
-
5東京都・小池知事「何もないところが今や観光スポットに」 都庁プロジェクションマッピングの意義強調 都試算で18億円の経済波及効果
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月5日 0時1分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください