石炭火力はフェーズダウン COP26の評価と課題 その2
Japan In-depth / 2021年11月22日 23時0分
しかしグラスゴー気候協定は今後に大きな火種を残すこととなった。
2050年全球カーボンニュートラルを目指すという方針を明確に打ち出すことは、2050年までに排出できるCO2総量に枠をはめることと同義である。その限られた炭素予算をめぐって、今後、先進国、途上国の激しい争奪戦が生ずることは確実だ。
2050年全球カーボンニュートラルとは全ての国が2050年カーボンニュートラルを達成することと同義ではない。事実、インドは先進国が2050年全球カーボンニュートラルを強くプッシュする以上、先進国は2050年よりももっと早いタイミングでカーボンニュートラルを達成し、途上国に「炭素スペース」を与えるべきだ、途上国にカーボンニュートラル目標やNDCの引き上げを要求するならば毎年の支援額を1兆ドルにすべきだと主張している。2℃目標への道筋ですら大幅に外れている中で、欧米諸国が1.5℃という「大言壮語」を押し通したツケは、今後10年間、カーボンニュートラル目標前倒し、目標引き上げ、途上国支援の大幅上積みを間断なく途上国から要求されるという形で自らに返ってくるだろう。
合意文書ではパリ協定の温度目標に沿った形でNDCを強化し2022年末までに提出することが求められている。米国、EU、日本は「自分たちは2050年カーボンニュートラルを表明し、NDCも強化したのだから、更なる見直しは不要である」と考えている。しかし中国、インドが新たなNDCを2022年末までに提出するかといえば、その可能性は低い。彼らは「自分たちは2060年、2070年のカーボンニュートラル目標をかかげている。これは今世紀後半のカーボンニュートラルを達成するというパリ協定の規定と整合的である。NDCの評価軸は1.5℃~2℃のパリ協定の温度目標であり、1.5℃決め打ちではない」と主張するに違いない。来年のCOP27で採択予定の「勝負の10年」における野心引き揚げの作業計画をめぐって先進国と途上国が激しく対立することは間違いない。
石炭火力についてもフェーズダウンということで今回は決着したが、今後、年限を区切ってフェーズアウトという議論が再燃する、更にその対象が化石燃料全体に話が広がる可能性も十分にある。
問題はそうした議論が現実のエネルギー情勢と全く乖離していることだ。欧州発で日本にも影響が及んできているエネルギー危機の大きな原因は経済回復によるエネルギー需要増に供給が追い付いていないからであり、その背景には石油、ガスの上流投資の停滞がある。石油、ガス火力の上流投資が停滞している理由は石油価格の低下、コロナ等の要因があるが、過激な化石燃料叩きが広がりを見せる中で、将来の投資に慎重になっている側面も大きい。
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