石炭火力はフェーズダウン COP26の評価と課題 その2
Japan In-depth / 2021年11月22日 23時0分
COP26では化石燃料セクターへの公的融資の停止に関する有志国宣言に米国、EU諸国が名前を連ねている。これにより上流投資がますます滞れば、エネルギー需給ひっ迫が今後も生ずる可能性が高まる。世界的なガス需要の高まりも石炭を排除する欧州発の環境原理主義の影響が大きい。欧州のエネルギー危機の相当部分は自らの偏った環境原理主義的政策が招いた帰結である。
ところがパイプライン計画を差し止めにしたり連邦所有地での石油ガス生産を抑制してきたバイデン政権がガソリン価格急騰に遭遇するや、OPECやロシアに増産を要請したり、風が吹かずに電力不足に陥った英国が古い石炭火力を動かす等、脱化石燃料という掛け声とは裏腹の動きも生じている。このことは国民への低廉で安定的なエネルギー供給というエネルギー政策の最も根源的な要請が危うくなれば、温暖化防止を横においてでも現在の国民生活を守らねばならないという当たり前のことを示唆している。
今後、2030年までの道のりは決して平坦ではない。米中対立の行方も不透明だ。COP26では米中共同声明が鳴り物入りでPRされたが、中身はほとんど目新しいものがなく、中国は何も譲歩していない。
▲画像 11月13日、COP26を終えて部屋から出てきたジョン・ケリーら。 出典:Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images
国内で支持率が低下したバイデン政権が唯一、国民から評価されている温暖化分野で成果をあげたいという米側の事情が垣間見える。そこにつけこんで中国はしたたかに米国からの譲歩を得ようとするだろう。温暖化問題はそれ自体が独立して存在しているのではなく、地政学、地経学的なコンテキストでとらえることが必要だ。中国は間違いなくそういう視点でものを考えている。更に2022年の中間選挙、2024年の大統領選挙で米国がどちらに向かうかもわからない。エネルギー危機がどう収束するか、また起きるのかも見通しにくい。
COP26で1.5℃のデファクトスタンダード化が固められたが、主要国中最もエネルギー面で脆弱であり、エネルギーコストも高い日本はアンテナを高くしてくれぐれも一人損をしないようにしなければならない。
(その1。全2回)
トップ画像:11月13日、株式取得本会議に参加するインド環境森林気候変動大臣、ブペンダー・ヤコブ氏。 出典:Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images
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