「学術的鎖国」状態からの脱却を「2022年を占う!」医療
Japan In-depth / 2021年12月25日 11時0分
この間、世界はコロナ研究に専心し、mRNAワクチンの開発のような創薬プラットフォームから、人工知能の導入、遠隔診療の普及まで世界の医療は様変わりした。
いまや人工知能は医療界でもありふれたものとなった。米国立生物工学情報センター(NCBI)の研究者によれば、臨床医が異常を認めなかった25人のコロナ患者のCT画像をAIが評価したところ、17人で異常を検出したという。コロナ流行以降、医学雑誌には、この手の研究が溢れている。米グランド・ビュー・リサーチ社は、AI診断の市場は年率33%の速さで成長すると予想している。日本で、このような気配はない。
遠隔診療の停滞も深刻だ。コロナ流行で世界とは大きな差がついた。2020年11月、米ジョンソン・エンド・ジョンソンは、糖尿病治療薬の第3相臨床試験を、全てバーチャルでやり遂げたと発表した。ウェアラブル端末や、クラウドを用いた画像・病理の遠隔診断が発展すれば、益々、この傾向は進む。
このような動きは、臨床試験だけでなく、医療のあり方そのものを変える。多くの医療行為で、患者がどこにいても診察を受けることができるようになるのだから、医師偏在や医師不足の議論は、根本的に変わる。世界では、このような議論が既に始まっているが、日本で聞くことはない。
なぜ、こんなことになるのか。それは、我が国では非科学的な議論でお茶を濁し、体面を取り繕った人物が「出世」するからだ。
「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革だ」11月27-28日、東京都港区で開催された第16回現場からの医療改革推進協議会シンポジウムに出席した塩崎恭久・元厚労大臣が語った言葉だ。
この会は、私と鈴木寛・東京大学公共政策大学院・慶応義塾大学政策・メディア研究科教授が事務局長を務める有志の集まりだ。毎年11月にシンポジウムを開催している。当日はオンラインと会場を併せて、約200人が参加し、議論した。
塩崎氏は、与野党を問わず、多くの政治家が情報ソースを官僚に依存していることを認めた上で、「国民はコロナ対策に科学的な合理性を期待するが、官僚組織で最優先されるのはムラ社会の理屈で、科学的合理性は二の次」と批判した。
2年11ヶ月の間、厚労大臣を務めた塩崎氏が問題視するのは、厚労省の人事だ。「非科学的でも、ムラ社会の体面を保った官僚が出世する」と批判した。誰だって、社会に役立つ仕事がしたい。そのようなことを続ければ、優秀な若手官僚から嫌気が指して止めていくし、優秀な大学生が入省してこない。塩崎氏は「できることなら政府には優秀な人材が集まって欲しい。そのためには、科学的に正しい政策を遂行した役人が評価されなければならない」とした。そして、そのような評価軸をつくることこそ、政治家の仕事であると断じた。ところが、自民党の総裁選で、このことを問題視した政治家は一人もいなかった。
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