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箱根駅伝の功罪 年末年始の風物詩について その4

Japan In-depth / 2021年12月27日 22時22分

箱根駅伝の功罪 年末年始の風物詩について その4




林信吾(作家・ジャーナリスト)





林信吾の「西方見聞録」





【まとめ】





・年末年始はスポーツ中継が多い。とりわけ1月2日、3日に放送される箱根駅伝は人気。





・世界レベルのマラソンランナーがなかなか出てこないのは、駅伝が一因なのではと見る向きも。





・孤独との戦いとも言われるマラソンより、仲間が襷をつないで行く駅伝の方が、平和の祭典にはふさわしい気もする。





 





年末年始はスポーツの中継も多い。とりわけ1月の2日、3日に放送される箱根駅伝は、多くの人が見る。





私見、食い入るように見る人はさほど大勢おらず、昼の時間帯なので、正月の酒と料理を楽しみながら、という人が多いようではあるが。





私も中学時代は陸上部員で、しかも長距離(と言っても、中学では1500メートル)走者だったのだが、マラソンや駅伝の中継にそれほど熱くはならない。端的に、マラソンの中継を2時間見るよりも、サッカーの中継を2時間見た方がずっと多くのものを得られるように思うからだ。





それに、一般的にはあまり知られていない話だと思うが、陸上界、とりわけマラソン関係者の間からは、箱根駅伝について批判的な声も聞かれる。





個人的な思い出を少し語らせていただくことをお許し願いたいが、10年ほど前、実家のある板橋区内の道場で少林寺拳法を教えていた中学3年生から、某文化大学の附属高校に進む決意を聞かされた。





学業もなかなか優秀な子で、同学の関係者には申し訳ない表現になるが、ご両親は、もっと偏差値の高い学校も狙えるのに、と言って、あまり良い顔をしていなかったそうだ。





しかしその大学はスポーツでは強豪で、とりわけ陸上部は、附属高校ともども名をはせ始めた時期であった。





「箱根駅伝を走りますよ」





というのが当人の弁で、高校進学後も道場へは時折顔を出していたが、陸上の方はどんな調子だ、と尋ねると、





「いやあ、23区内の中学のエース級が集まってますからね。なかなか……」





と言って頭をかいていた。





実はこれが、マラソン関係者の一部が箱根駅伝に批判的な目を向ける理由なのである。





関東限定の、学生の地方大会に過ぎないこのイベントが、日本テレビ系で全国に中継され、今や正月の風物詩とも言える地位を確立している。





この結果、全国の高校陸上部でエース級と称される長距離ランナーたちが、こぞって首都圏の駅伝強豪校への進学を志すようになり、彼らを受け容れた大学陸上部も、いきおい駅伝に特化した練習をする。





世界レベルのマラソンランナーがなかなか出てこないのは、これも一因なのではないか、というわけだ。





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