バイデン外交の回顧と展望 私の取材 その4 硬軟まだらの対中姿勢
Japan In-depth / 2022年1月2日 11時0分
バイデン政権は、共和党のトランプ氏への対抗意識があって、最初のごく短期間には「自由で開かれた」という言葉を使わなかったが、まもなくその言葉を使用するようになった。「自由で開かれた」という言葉には、自由ではなく、開かれていない中国の体制に対する反対だという意味が込められている。
バイデン政権は国際協調を重視して中国に対応しようとしている点では、トランプ政権との違いはある。とはいえ、自由民主主義とは異なる体制を広めていこうとしている中国を「アメリカあるいは国際社会にとって最大の競合国」と位置づけており、これは、トランプ政権の考え方と共通している。
しかし、バイデン政権の対中政策には、トランプ政権とは非常に大きく異なる点が少なくとも2点ある。
1点は、バイデン政権の政策標語である。バイデン大統領は「中国との競合」とは言うが、「対決」「対立」「抑止」といった言葉はほとんど使わない。しかも、「競合」という表現と同時に、「協力」という言葉を必ず用いている。
バイデン政権が中国との協力を必要としているのは、気候変動の分野だ。
バイデン政権は、軍事、政治、経済などの分野で中国を厳しく批判する一方、気候変動では中国と協調しようとしているのだ。気候変動担当大統領特使に任命されたジョン・ケリー元国務長官は独自に中国を訪問し、中国政府担当者と協議しているという。
▲写真 気候変動担当の大統領特使として中国とも交渉にあたるジョン・ケリー元国務長官(2021年12月8日) 出典:Chris J Ratcliffe/Getty Images
つまり、バイデン政権の対中政策には、競合する部分と協調する部分、硬軟が入り混じった、まだら外交という特徴がある。
もう一つのバイデン政権の対中政策の特徴は「軍事軽視」だ。トランプ政権時代には、史上最大の国防費増額を行ったが、その主要部分は中国に対する軍事的抑止が目的だった。弾道ミサイル、潜水艦、航空機などハードウェアの増大、強化によって中国を抑えようとしたのである。
トランプ政権の国家防衛戦略には「中国との戦争を防ぐ最善の方法は、中国と実際に戦争をして勝てる能力を持つことだ」と明確に書かれていた。日本では最も嫌われるような表現だが、トランプ政権は「アメリカの軍事力を増強し、相手との戦争に勝てる能力を保てば、相手は絶対に戦争を仕掛けて来ない。それによって戦争を防ぐことができる」という考え方に基づいて軍事力を増強した。
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