バイデン外交の回顧と展望 私の取材 その4 硬軟まだらの対中姿勢
Japan In-depth / 2022年1月2日 11時0分
これに対して、バイデン大統領の姿勢は非常に穏やかだ。オバマ大統領に象徴されるように、もともと民主党リベラル派には「軍事軽視」の傾向がある。国際問題を解決する手段として軍事的手段を使いたくないという傾向だ。そのため、バイデン大統領は「米中冷戦ではない」とも発言している。
一方、中国は国際紛争を解決するために軍事力を行使することを厭わない国だ。実際の中国の行動がそれを証明している。例えば、中国はベトナムとの間の紛争も軍事力で解決した。1979年に鄧小平は「ベトナムを懲罰する」と宣言して、50万人の大軍をベトナムに侵入させたことがある。
このバイデン政権の「軍事軽視」という特徴が米中関係に微妙な変化をもたらしている。特に軍事面での中国の態度が変わってきており、台湾の防空識別圏にも頻繁に潜入するようになった。トランプ政権の時にはなかったことだ。
また、3月18日、19日の2日間にわたり、アメリカのアラスカ州で米中外交責任者会談が開かれ、中国側は王毅外相と楊潔篪(ようけつち)中国共産党中央政治局委員が、アメリカ側はブリンケン国務長官とサリバン国家安全保障問題担当補佐官が出席した。その際、中国側は記者団の前で「アメリカこそ民主主義を弾圧している」とさんざんにアメリカを批判した。
共和党側は、「トランプ政権時代にはこうしたことは起きなかった」と語っている。バイデン政権になってから、中国はアメリカを軽視するようになり、アメリカを恐れなくなったのではないか。
(その5につづく。その1、その2、その3。全7回)
**この記事は公益財団法人の国策研究会の月刊機関誌「新国策」2021年12月号に掲載された古森義久氏の同研究会での講演の記録の転載です。
トップ写真:オンラインによる米中首脳会談(2021年11月15日 米ホワイトハウス) 出典:Alex Wong/Getty Images
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