戦争回避の「よき前例」を(下)「2022年を占う!」国際情勢
Japan In-depth / 2022年1月2日 19時23分
一方では、タタール系などの住民が共産党政権に反対していたとして、多数が「土地を追われ、代わってロシア系住民がクリミア半島に移住したが、他方では、1958年に時の首相ニキータ・フルシチョフが、ロシアとウクライナの友好親善の証として、それまでロシア領とされてきたクリミア半島をウクライナに割譲したのである。
1991年にソ連邦が崩壊すると、ウクライナはあらためて独立国となったのだが、ロシアとの関係はたちまち険悪なものとなった。
直接のきっかけは、ウクライナが黒海艦隊の一部艦艇の所有権を主張したことだが、その後、親ロシア派住民による強引な「投票」、さらには武装蜂起まで起きて、結果的にロシアの実効支配が確立したのが2014年のことである。
そして今次、具体的には2021年末からの話だが、ロシアはウクライナとの国境地帯に17万もの兵力を集め、NATO(北大西洋条約機構)加盟を模索するウクライナに対して圧力を加えた。
1月末にもウクライナ侵攻があるのではないか、と心配されたが、それは、ウクライナ北部と国境を接するロシア領は大湿原地帯なのだが、冬場は凍結するため、戦車などの運用が比較的容易になる。春になって雪が溶け、大湿原が「天然の壕」に戻るまでが格好のタイミングではないか、というわけだ。
ただ、年末も押し詰まってから、2022年初頭にあらためて首脳会談を開く旨が発表されるや、ロシアが早々と軍部隊の一部を撤収させたという事実はある。プーチン大統領自身、
「先制攻撃の意図はない」
と明言しているので、1月末にも、と予測された軍事衝突の危機は(偶発的な衝突の危機は依然としてあるにせよ)、ひとまず回避されたと考えてよいだろう。
▲写真 米露首脳は12月30日に電話で協議し、ウクライナ情勢をめぐり2022年1月にも再び協議することで合意した。写真はオンライン形式での首脳会談に臨むロシアのプーチン大統領(右)とバイデン米大統領(左)。2021年12月7日 モスクワ 出典:ロシア大統領府ホームページ
私見ながらこの会談の帰趨は、我が国としても大いに注目すべき問題をはらんでいる。
おそらく、
「ウクライナのNATO加盟と、ロシアによるクリミア半島実効支配の問題を、ともに先送りにする」
ということで当面の武力衝突を回避すればよしとする方向で話が進むと思うが、日本にとってもっとよいのは、
「たとえウクライナがNATOに加盟しても、米英独などの軍隊は駐留せず、基地も新設しない」
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