バイデン外交の回顧と展望 私の取材 その5 軍事面での弱腰
Japan In-depth / 2022年1月3日 11時0分
第2の根拠は、9月下旬にバイデン大統領が行った国連演説だ。かなり長時間の演説だったが、批判の対象として中国という国名を挙げなかったのだ。「自由で開かれた」という表現は使ったが、中国に対する厳しい発言は控えた。中国を念頭においたと思われる部分では「冷戦は求めない」とも述べた。
バイデン大統領は人権抑圧に関しても、キューバ、イラン、ベネズエラなどの国名は挙げたが、中国の名前は挙げなかった。その結果、「やはりバイデン大統領は中国と対決するつもりはないのではないか」という懸念が、共和党筋からも出てきている。
▲写真 国連総会で演説するバイデン大統領(2021年9月21日 国連本部) 出典:Timothy A. Clary-Pool/Getty Images
第3の根拠は、バイデン政権による国防費の事実上の削減だ。議会や学界からは、それが中国の軍事攻勢を招く結果となっているとの批判が出てきている。
アメリカ議会下院には、軍事問題に精通している共和党議員が多く、実際にイラクやアフガンでの戦争に参加した軍人上がりの議員が増えてきている。アフガンで爆発物によって足を失い、車いすで生活している下院議員もいる。この議員は非常に迫力があり、弁も立つ。
私は長年アメリカ議会を見てきたが、新しいタイプの新世代の議員が登場していると感じている。もちろん、民主党にも弁が立ち迫力のあるリベラル派議員が出てきている。
そうした軍事問題に精通した代表的な若手議員の1人が、下院軍事委員会の有力メンバーのマイク・ギャラファー議員(共和党)だ。彼は、10月上旬にワシントン・ポストへ寄稿し、「バイデン政権の国防費の事実上の削減が、トランプ政権時代よりも大胆で果敢な中国の軍事攻勢を招く結果になった」と批判した。
▲写真 米共和党マイク・ギャラファー議員(2021年6月29日) 出典:Kevin Dietsch/Getty Images
バイデン政権の国防費は、インフレ率を勘案すると事実上削減になっているのだ。これはトランプ政権との非常に大きなコントラストだ。
以上のような根拠から、バイデン政権の対中政策には宥和的な要素があり、このままではアメリカが漂流していくのではないかという予測がごく最近出てきている。
その一方、バイデン政権が進めるインド太平洋での多国間連帯はかなり効果のありそうな取組となっている。
その一つがアメリカ、オーストラリア、インド、日本の4ヵ国による「クアッド(QUAD:Quadrilateral Security Dialogue)」だ。菅前総理も9月下旬に開催されたクアッドの首脳会合に参加した。
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