バイデン外交の回顧と展望 私の取材 最終回 日本にとっての国難が浮かぶ
Japan In-depth / 2022年1月5日 11時0分
中東政策のもうひとつの焦点であるイスラエルとの関係はどうか。
オバマ政権時代には、アメリカはイスラエルとかなり距離を置いていた。当時のネタニヤフ首相とオバマ氏との相性がよくなかったこともその原因だった。ネタニヤフ氏は、オバマ政権時代、議会の多数を占めていた共和党の招きにより米議会で演説し、イラン核合意に対する反対意見を堂々と述べ、オバマ政権を批判した。
次のトランプ大統領は、オバマ政権の対イスラエル政策を転換し、イスラエルに対して目に見える形で接近した。エルサレムを正式にイスラエルの首都と認め、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移すなど、イスラエルの要望に沿い、パレスチナの要望を抑える形で中東政策を展開した。
一方、イランは「イスラエルは抹殺しなければならない」と述べるなど、強硬姿勢をとり続けており、それについていけないアラブ諸国も出てきた。このような状況を受け、アメリカの支援が大きな原動力となり、アラブ諸国の中にイスラエルとの和解の流れが出てきたのである。
その結果、トランプ政権末期の2020年に、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、スーダン、モロッコがイスラエルとの国交正常化で合意した。そして同年9月15日には、トランプ大統領の仲裁によって、イスラエルとUAE、バーレーンの間でアブラハム合意が結ばれ、イスラエルとの友好関係促進で合意した。(その後、スーダンとモロッコも合意に加わった)
▲写真 アブラハム合意調印式。(左から)バーレーンのザイヤーニ外相、イスラエルのネタニヤフ首相、トランプ米大統領、アラブ首長国連邦のアブドラ外相(2020年9月15日 米・ホワイトハウス) 出典:Alex Wong/Getty Images
当初バイデン政権は、イスラエル優遇の色彩が強いアブラハム合意を認めないのではないかとの見方もあった。ところが2021年9月15日のアブラハム合意1周年に当たり、ブリンケン国務長官が当事国が参加するオンライン会議を主催し、「トランプ前政権が成功させた国交正常化に向けた取り組みを、バイデン政権は受け継いでいく」と述べた。
こうした発言からも、イスラエルとの距離を置き、パレスチナの要望に最大限の配慮をするという民主党リベラル派の伝統的な中東政策は転換されつつあるようにみえる。中東情勢は大きな流れとしては、イスラエルを優遇する方向に動いていくとみられている。
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