バイデン外交の回顧と展望 私の取材 最終回 日本にとっての国難が浮かぶ
Japan In-depth / 2022年1月5日 11時0分
2021年5月10日からの11日間、パレスチナのテロ組織「ハマス」とイスラエルの戦争が勃発した。ハマスは4,000発のミサイルやロケットを発射したが、イスラエルはミサイル防衛システム「アイアンドーム」(鉄のドーム)によって90%を撃ち落とし、死者は12人にとどまったという。これに対して、パレスチナ側は百数十人もの死者が出た。
▲写真 ガザ地区北部からイスラエルに向けて発射されたロケット弾を撃ち落とすイスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム」(2021年5月14日 ガザ地区から撮影)。 出典:Fatima Shbair/Getty Images
このイスラエルの圧勝によって、イスラエルがさらに強く認知されるようになった。結局、バイデン政権においても、大きな流れとしては、イスラエルとの関係を重視し、イランへの警戒を保ちながら慎重に政策を進めていくというトランプ政権時代の中東政策は維持されるのではないか。
ただし、アメリカ政府の政策全体における中東問題の比重は減少してきている。バイデン政権には中東にエネルギーを注ぎ込む余裕はなく、また中東の石油への依存度が低下しているからだ。
北朝鮮との関係に関しては、2019年の米朝会談が決裂して以来進展はない。バイデン政権において、北朝鮮問題はそれほど切迫した課題とはとらえられていないようだ。北朝鮮の非核化がワシントンで話題になることはほとんどない。
アメリカの対日政策は、共和党、民主党問わず一見、安定しているようにみえる。しかし、いくつかの重要な問題点もある。
4月に訪米した菅前総理はバイデン大統領と日米首脳会談を行い、共同声明でも「日本が防衛力を強化していく決意をした」と述べたが、日本側が防衛力強化に向けた具体的なアクションをとっていないことを私は懸念している。
私が長年アメリカの動向を考察していて感じるのは、日米同盟の特殊性である。アメリカが他国と結んでいる同盟と異なり、日米同盟は双務性に欠ける。例えば、米軍が太平洋のどこかで攻撃された場合や台湾有事の際に、日本がどう動くかは明確ではない。
憲法9条の制約によって、日米同盟はフル稼働できない状況にある。トランプ前大統領が「日米同盟は不公平だ」と語ったように、アメリカには本音の部分でそうした不満がくすぶっている。
一方、アメリカはソ連(ロシア)と2019年まで中距離核戦力(INF)全廃条約を結んでいたために、地上配備の中距離ミサイルをほとんど保有していないが、中国は中距離弾道ミサイルを約2,000基、北朝鮮も数百基を保有している。
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