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10式戦車の調達は陸自を弱体化させるだけ(上)

Japan In-depth / 2022年1月12日 23時0分

10式を調達するよりも、90式を近代化し、浮いたカネでトランスポーターを充実させたほうがよほど戦力強化になったはずだ。





自衛隊の戦車運用は伝統的に空想的である。74式戦車は、国鉄の輸送貨車で運搬できるサイズと重量ということで仕様が決まったが、当時も今も国鉄(現JR)を自衛隊が指揮下に置く、あるいは徴用する法令は整備されていない。小銃でも突きつけて国鉄に輸送を命じるつもりだったのであろうか。空想をもとにまともな戦車が開発できるはずもあるまい。





そもそも対ソ連戦を意識した90式が北海道限定運用なのもおかしな話だ。ソ連が侵攻する場合は都合よく「北海道に侵攻してくれる」という想定で開発したことになる。まるで旧軍の作戦参謀の作戦である。実際の戦争になれば敵はこちらの弱点をつくのが常であり、そうであれば新型戦車の存在しない本州にでも上陸してくる可能性は高かったはずだ。





そして実は最盛期のソ連軍にも日本に本格的に揚陸してくる能力も、そのような計画も存在していなかった。





90式開発後に次世代の戦車開発のために評価の会議があった。その席で90式は重すぎ、値段が高すぎる、120ミリ砲を105ミリ砲にしようとか、暗視装置は高いサーマル式から74式と同じナイトビジョンにしようなどというアイディアが出たという。であれば90式など開発せずに、74式の改良でよかったではないか、と出席した元幹部は証言している。





ゲリラ・コマンドウ対処、機甲戦でも90式の改良で十分対応できた。10式の能力は、軽量さ以外は90式に付加が可能であり、その方が開発費も近代化費用も遥かに安く、また短期間で実現できた。そして車体が大きな分、90式の方が将来の近代化に耐える冗長性もある。





それに陸自では2016年に74式戦車と同じ105ミリ戦車砲を搭載した装輪戦車ともいえる、8輪の16式機動戦闘車が導入されている。戦車のようにトレーラーに搭載して移動することなく自走して高速で戦略移動が可能である。火力が迅速に必要ならばこれを使うほうが遥かに迅速に展開できる。





仮に機甲戦を行うにしても、他国の最新型戦車は大概90式よりも重たい。そうであれば本土での運用は90式以上に制限される。敢えて10式という「軽量戦車」を開発する必要はなかった。どうしても軽量な戦車がゲリラ・コマンドウ対処で必要であれば更に古い74式を近代化して使用すればことは足りる。





にもかかわらず、防衛省はサブシステムも含めて一千億円の開発費を掛けて開発した。防衛大綱の定める定数の300輌を調達するのであれば、1輌12億円と控えめに計算しても3,600億円、教育所要を含めて90式と同じ、340輌ならば、4,080億円、合わせて5,080億円かかることになる。一輌14億円ならば5,760億円となる。しかも現役の第3世代である90式を廃棄する費用がかかるので、そのコストも含めれば10式導入・運用コストは更に嵩むこととなる。





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