「高校3年生同士で結婚」は可能か 民法改正「18歳成人」に思う その3
Japan In-depth / 2022年1月18日 7時0分
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」
よく知られるように日本国憲法は、敗戦後の日本を支配していたGHQ(占領軍総司令部)の主導で起草され、草案の原文は英語で書かれている。
つまりは戦前の、大日本帝国憲法の体制下にあって、こうした男女平等の規定は存在しなかった。実際に1896(明治29)年に制定された、世に言う明治民法には、
「家族が婚姻または養子縁組をなすには戸主の同意を得なければならない」(第750条。新漢字・現代仮名遣いで表記。以下同じ)
と明記されていたのである。「親の許しを得ない結婚は非合法」であったわけだが、こうした法律があるがために、若い男女の駆け落ちや無理心中が後を絶たないのだ、という批判も当時からあったと聞く。
結婚が可能となる年齢についても、
「男は満17歳、女は満15歳に至らざれば婚姻をなすことを得ず」(第765条)
と定められていた。
こちらも少々、解説が必要だろう。
明治以前には12~13歳、あるいはもっと幼い男女(というよりは子供同士)の婚姻もよく見られたのだが、未成熟な者同士の結婚は弊害が多いとして、このような規定を設ける必要があるとされたのである。
敗戦後この条文は改正され、前述のように男性は18歳、女性は16歳からとなった。ちなみに、満20歳になれば「両性の合意のみ」で結婚することができる。さらに余談ながら、明治の民法にも、
「子が婚姻をするには、その家にある父母の同意を得なければならない。ただし男が満30歳、女が満25歳に達した後はこの限りではない」
との規定も存在した(第772条)。そのトシになったら、なんでもいいから早く結婚しろ、などということでは、まさかなかったと思うが、いずれにせよ戦前は、結婚とは「家と家との結びつき」であり、親の許しを得ない結婚などあり得ない、という意識は、相当広く浸透していた。
回りくどい説明になってしまった点は申し訳なく思うが、こうした結婚観もまた、
「日本国民は天皇を家父長とするひとつの家族」
というイデオロギーに立脚したものであると、GHQの目には映った。それこそが日本国憲法において「両性の合意のみ」で結婚できるとの条文が盛り込まれた理由だったのである。
つまり、年齢制限が本質的な問題なのではない。
今次の改正で結婚可能年齢が「男女とも18歳」になったのも、従前のように男女で差があるのは、それこそ男女平等を定めた日本国憲法の精神に反する、という理由なのだ。
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