「折衷案」こそ諸悪の根源(下)民法改正「18歳成人」に思う その5
Japan In-depth / 2022年1月26日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・「少年減免」は各国にあり、取り立てて日本の少年法が「殺人犯に甘い」との批判は当たらない。
・少年法の問題点は「凶悪化」に対してではなく、「低年齢化」に対して機能不全。
・年齢で機械的に区切るのではなく、罪状と情状に応じ臨機応変に対応できる制度が望ましい。
民法と並行して、少年法の改正問題について述べているが、今年の成人式は
「最後の20歳成人」
を祝う式典となったため、会場の出口などで毎年行われる、新成人へのインタビューでも「18歳成人」への移行に関する質問が、必ずと言ってよいほど出ていた。
「式典より、同級生と飲み会に行くのが楽しみ」
と答えた男性は、くだんの質問に対しても、
「成人イコールお酒が飲める、というイメージが強い。責任だけ負わされて楽しみは後回し、というのは、今の18歳が気の毒な気もする」
と語った。
事の重大さは違うかも知れないが、私が今次の少年法改正について、18,19歳の「特定少年」は、果たして成人なのか少年(=未成年)なのか、基本的なところを曖昧にした、単なる折衷案ではないか、と批判したのも、おおむね同じ発想に基づいている。
1月15日には、東京・文京区の東京大学弥生キャンパス(農学部など)で大学入学共通テストが行われていたのだが、高校2年生で17歳の少年が、隠し持っていた包丁で大学職員と男女の受験生、計3名を襲撃する事件が起きた。
殺人未遂罪で現行犯逮捕されたが、18歳と19歳を「特定少年」として実名報道も可能とする改正少年法が4月から施行されるので、その年齢に達する前の「駆け込み犯行」ではなかったか、との見方をする人も、ネット上には一定数いたようである。
その後の報道を見る限り、どうも少年法の問題とは関わりなく、最初に自供した通り、
「東大理Ⅲ(理科三類。医学部に進学する)を目指して勉強していたのだが、思うように成績が上がらず、やけになって、人を殺して切腹しようと思った」
ということであったらしい。
写真)ノーヘルメットのバイク運転で検挙される新成人 2019年1月13日 成人の日
出典)Photo by Carl Court/Getty Images
話を戻して、現行少年法においては、刑事罰を科すことができる「刑事責任年齢」は14歳以上で、一定の年齢以下であれば死刑や無期刑は科さないとする「少年減免」は18歳未満となっている。
前回も述べたように、こうした法律は各国にあるのだが、ここで諸外国の例を少しだけ見ておくとしよう。
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