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「折衷案」こそ諸悪の根源(下)民法改正「18歳成人」に思う その5

Japan In-depth / 2022年1月26日 11時0分

 その前にひとつ、お断りを。


 日本のメディアでは、とかく「欧米では」という表現が多用されるが、言うまでもないことながら、法体系は国によって様々である。


 たとえば同じ英国(=連合王国)内でも、イングランドでは刑事責任年齢が10歳以上、スコットランドでは12歳以上という違いがあるし、米国に至っては州ごとに法律が異なっている。


 しかし、西ヨーロッパ諸国にあって、刑事責任年齢を日本と同じ14歳以上に設定しているのはドイツくらいなもので、日本より高い16歳以上となるとルクセンブルクだけだということも、また事実である。


 少年減免もまちまちで、イングランドでは21歳未満の者には終身刑(死刑は廃止されている)は課さないことになっているし、ドイツでは同じく21歳未満の者に対しては、最高刑が懲役10年までに制限されている。フランスでは罪状や情状によって異なり、16歳以上で再犯の場合は成人と同じ刑罰を受ける場合があるそうだ。


 総じて言えることは、少年減免に関する限り、取り立てて日本の少年法が「殺人犯に対しても甘い」という批判は当たらないように思う。


 少年犯罪の凶悪化について語られる際、必ず引き合いに出されるのが、1988年に東京・足立区で起きた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」だが、同事件で主犯格の少年(犯行当時18歳)には懲役20年が課せられている。もちろん、彼らが被害者に対してなしたことを考えればこれでも甘すぎる、との意見を開陳する人も大勢いて、かく言う私もその一人だが。


 アジアに目を向けると、たとえば中国では、刑事責任年齢が16歳以上と日本より高いが、殺人や麻薬密売といった重罪の場合は14歳以上となる。かの国では、アヘン戦争という歴史問題があるため、麻薬犯罪は特に重く罰せられるのだ。


 そのアヘン戦争とも関わりのある話だが、香港では10歳以上となっている。これはまず間違いなく、大英帝国の支配下にあった歴史が関係しているのだろう。


 韓国も日本と同じ14歳以上。北朝鮮も同じだと聞くが、詳しい資料はない。年齢性別など関わりなく、将軍様の逆鱗に触れたら問答無用で殺される国であるから、そもそも少年法的な発想など意味を持たないのかも知れない。


 東南アジアでも、マレーシアは10歳以上、シンガポールでは7歳以上と、やはり大英帝国による支配の影響が見て取れる例が多い。


 米国では前述のように、州によって法律が異なるのだが、刑事責任年齢については、特に定めていないという州が、実は多い。ただしこうした州では誰かを訴追するに際して、
「被告が犯罪を起こした時点で善悪の判断をする能力を身につけていたことを、検察が立証する義務がある」
 との規定を設けている。刑事責任年齢を設定している州でも、6歳から12歳の間でまちまちだが、少年減免については18歳未満と定めている州が多いようだ。


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