久し振りのインフレ率上昇「対応温故知新」
Japan In-depth / 2022年2月1日 23時0分
■ 今回はどうなるか
▲写真 コロナウイルスパンデミックに対する連邦準備制度の対応について、連邦準備制度理事会のヒアリングで証言するパウエルFRB議長(2021年6月22日にワシントンDC) 出典:Photo by Graeme Jennings-Pool/Getty Images
さて、現在に目を戻すと、12月の米国の消費者物価前年比は7%を超えた。欧州でも5%となっている。米国の中央銀行である連邦準備制度(FRB)は、インフレの加速を避けるため、金融政策の舵を引き締め方向に切っている。一方、日本のインフレ率はまだ1%にも達していないので、事態の深刻度は相当違う。したがって、日本では米国ほどにはインフレ抑制の対応を強めなくて良いということになる。
ただ、現在の日本の低いインフレ率には、携帯電話通信料の引き下げという一時的な要因が△1〜1.5%程度影響している。4月以降はその要因がなくなるので、日本銀行が目標としている2%インフレに近づくとの見方もある。それでも欧米に比べればかなりマイルドだ。そうした状況なので、日本銀行は今のところこれまでの金融緩和を基本的に維持するとしている。
国際通貨基金(IMF)が1月に発表した世界経済見通しは、2022年末に向け、欧米諸国のインフレ率も次第に低下していく姿となっている。そうであれば、日本としては、現在の海外要因によるインフレ率の高まりを梃子に、その圧力が低減しても目標の2%インフレが実現するよう目指すことになるのだろうか。
その際、賃金の動きがとりわけ注目される。もし、今年のベアに限って、4月時点のインフレ率を基準にすることが可能であるなら、足元のインフレ率が賃金上昇率に反映され、それが今後の物価動向にも繋がるという循環になるかもしれないが。
他方、現在の日本の超金融緩和は、企業経営や産業構造の変化を促す観点からはやり過ぎとの指摘もある。企業が投資計画を考える3〜5年程度の期間の金利がずっとゼロ近傍のままという予想が広まり、それを前提にした投資プロジェクトが広範に採択されると、どうしても低リターンの投資案件の比率が高まってしまう。
そうなると、賃金もなかなか上がらず、結局、日本経済全体の潜在的な成長力を高める観点からはプラスにはならない。この機会に、その辺りの期間の金利のあり方を、ちょっと見直すという考え方もあり得るかもしれない。
■ 大きなショックが浮き彫りにする構造的な問題
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