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日本語は乱れているのか(上) 日本の言論状況を考える その3

Japan In-depth / 2022年2月23日 12時3分

 早い話が、略語とか便利な言い回しは、必ず人口に膾炙するものであり、日本語も英語も、乱れているのではなく不断に変わっているに過ぎないのだ。


 実際問題として、言語学者の中にも「ら抜き言葉」には定着するだけの理由がある、と考える人が少なからずいると聞く。理由は前述のように便利だからで、たとえば「Mi Ra Re Ru」のようにラ行が続くと発音しにくいが、この点「ら抜き」だと、そうした問題が生じない。


 比較的最近の例では「全然いいですよ」という言い方にひっかかった。これはどう考えても、日本語として成立しないだろう。


 ……と思っていたのだが、数年前、こんなことがあった。



写真)板野友美(2013年)
出典)Photo by Sports Nippon/Getty Images


AKBが東日本大震災の被災地で「復興応援ライブ」を続けているのだが、当時まだメンバーだった板野友美が、後輩たちを従えてステージから降りてきたところへ、一人の年配の婦人が近寄ってきた。


「孫があなたたちのファンだったのですが、津波で亡くなってしまいました。すぐそこの仮設(住宅)なのですが、お線香をあげてやっていただくわけに行かないでしょうか」


 と言う。これを聞いた板野友美は、


「あ、全然いいですよ。みんな行こ」


 と応じた。そして本当に、皆が仏壇の前に正座して合掌瞑目する場面が放送された。


 これなら、本当に全然いいですよ、と思ったのはおそらく、いや、希望的観測だが、私一人ではないだろう。


 もちろん、異なる感想を抱いた人も少なからずおられよう。震災遺族であるところの高齢者に対して、そんな口のきき方はないだろう、というように。


 これなど、ネットのコメント欄あたりなら、


「美人はなにをしても許されるのだ」


 で済ましてしまうところなのだが、大手の電子メディアでもって、今時こうした発言には十分注意しないといけない。


 その話は、次回。


トップ写真)清少納言 絵本「美人絵づくし」より 1683年頃。画家・菱川師宣。
出典)Photo by Heritage Art/Heritage Images via Getty Images


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