外来語と和製語について(上) 日本の言論状況を考える その5
Japan In-depth / 2022年2月28日 23時0分
話を戻して、私はフィーリングという言葉はあまり使わず、感性とか感覚と書くが、ニュアンスという表現は多用する。これとて「語感」でもよいが、それこそ少々ニュアンスが違う。ある言葉に含まれる、字義通りではなく、また理論的に説明しがたい意味づけ、といった説明も可能だが、いちいちそこまで言わずともニュアンスでそのまま通じるのだから、使うのを躊躇する理由もない。ちなみにもとはフランス語だ。
そう言いながらも、フィーリングもそうだが、いい加減なカタカナ言葉はできるだけ使うまい、と心がけていることも、また事実である。
理由は単一ではないのだが、やはり海外生活が比較的長い分、そのことを鼻にかけているとか、外国かぶれだとか思われるのは嫌だという意識が働くのではないかと、自分で考えている。前々回、赤塚不二夫の『おそ松くん』を引き合いに出したが、あの漫画にはイヤミというキャラクターが登場し、
「ミーはおフランスざんす」
みたいな台詞を乱発していたが、あれはまさしく、海外経験(当時まだ、海外旅行も簡単なことではなかった)を鼻にかける日本人に対する、赤塚不二夫一流の「嫌み」だったのだろう。
そう言えばロンドンで暮らしていた当時、一時帰国した際にたまたまTVで見かけたのだが、松本伊代が英会話学校のCMに出ていた。彼女が、
「サウンズ・グーッド」(Sounds goodだろうが、発音はまるっきり日本風だった笑)
などと言って受話器を置くと、父親役とおぼしきオッサンが、
「日本人離れした自分を感じちゃったりなんかしてるんだろ」
と言う。ちょっと考えさせられた。
今でも、モデルさんの体型などに対してよく使われる表現だが、日本人らしくない方がかっこいい、とはどういうことだろうか。要するに、こうした自己差別意識の一形態として、外国語の上手な日本人がやたら持ち上げられたり、その裏返しとして、外国語自慢はとにかく鼻につく、といった精神風土が醸成されてきたのではないだろうか。
それをさらに逆手に取ったのか、1990年代にはルー大柴というお笑い芸人が、
「あとのフェスティバル」「藪からスティック」「トゥギャザーしようぜ」
などという、カタカナ英語ですらない「ル―語」で一世を風靡した。
最初のうち、よくこんなことを思いつくな、と苦笑交じりに見ていたのだが、彼自身がこの「ルー語」についてTVで語っているのを見て、妙な具合に納得させられた。
どういうことかと言うと、彼の父上は旧満州で貿易業を営んでおり、英語とロシア語が堪能だったそうで、家庭でも、
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