狭まる「プーチン包囲網」クーデターか暗殺か、戦争犯罪で被告席か
Japan In-depth / 2022年3月10日 15時54分
付託した各国は、ICCが訴追対象とする集団殺害(ジェノサイド)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪のうち、とりあえず侵略犯罪をのぞく3項目があてはまるとしている。
ウクライナはICCに未加盟、ロシアは加盟の取り決めに署名したものの批准していない。しかし、未加盟国であっても、ICCの手続きを受け入れれば、その国で起きた事件の訴追が可能になる。
ロシアは受け入れを拒否するだろうから、プーチン氏を法廷に引き出すのは現実的には困難とみられるが、ICCの訴追に時効はないため、将来の政権が受け入れた場合、訴追される。
起訴されてもプーチン氏が出廷せず職にとどまっていた場合でも、外遊などで加盟国を訪問した場合、ICC検察官が発行した逮捕状によって身柄を拘束される可能性がある。外国人が日本の法令違反を犯した場合、訴追されるのと同じ理屈だ。
国際刑事裁判所はこれまで、30万人が死亡したといわれるスーダンのダルフール紛争で、当時のバシール大統領に逮捕状を出すなど精力的に活動してきた実績がある。
前身は、個別の国際法廷。1993年に設置された旧ユーゴ国際刑事裁判所では、ボスニア。ヘルツェゴビナ紛争などでの集団殺害、戦争犯罪を捜査、ユーゴのミロシェビッチ大統領を訴追(審理途中で死去)した。
■ 職にとどまっても各国から相手にされず?
プーチン氏が、暗殺、クーデター、刑事訴追いずれも免れたとしても、また、ウクライナ侵攻がどのような結末を迎えるにしても、戦争犯罪に問われ、首脳外交も不可能となったプーチン氏が各国から国家元首として遇されることはもはや困難だろう。侵攻を支持する一部の国をのぞいてだが。
プーチン氏のウクライナ侵攻は、市民だけで死者400人、200万人が難民として国を逃れるなど同国民を塗炭の苦しみに陥れただけでなく、自国、ロシア人自身にも大きな災厄をもたらした。
筆者の友人であり、日本の大学で教鞭をとっているロシア人教授は、厳しい視線を向けられ、制裁によって、ロシアへの帰郷はままならず、年老いた両親への送金もできないとあって悲痛な叫びをあげている。「ロシア人はモンスターではない。平和を愛し、世界の一員として民主国家と協力していきたい」ーと。
プーチン氏の胸の内を推しはかることなど不可能だが、いまのうちに思いなおして引き返せば、これ以上、罪を重ねることは避けられる。さもなければ、政治的にも個人的にも破滅が待つだけだろう。
トップ写真:第3回ユーラシア女性フォーラムで演説を行うウラジミール・プーチン(2021年10月14日) 出典:Photo by Mikhail Svetlov/Getty Images
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