EU、化石燃料の対ロ依存削減急ぐ
Japan In-depth / 2022年3月22日 7時0分
フォンデアライエン欧州委員長は声明で、「われわれをあからさまに脅す供給者を頼りにすることはできない」と強調した。
EUは来冬の需要増に備え、貯蔵能力の30%以下に減少している域内のガス在庫を10月までに90%超に引き上げることを目指す。一方、EUの既存の脱炭素化策を計画通りに実行し、ガス消費量も30年までに30%減らすことで依存脱却の実現を図る。一見、”綱渡り“ともみえる対応だ。
ロシアのウクライナ侵攻で加速したエネルギー価格高騰への対策も拡充する。EU加盟国が、価格高騰でエネルギー企業が偶発的に得た利益に課税できるようにするほか、EUの国家補助金ルールを緩和し、損害を被る企業に資金援助できるようにする。
◇ロシアの戦争遂行を後押し?
ロシアのエネルギー産業に降りかかってくる火の粉は、石油や天然ガスの輸入削減・禁止だけではない。冷戦終結後、約30年間にわたってロシアへのエネルギー事業への投資を進めてきたBPやシェル、エクソンモービルなどの欧米石油メジャーが次々と撤退を表明している。ただ、フランスのトタルのようにロシアでの事業を継続する企業もある。
ロシア離れはエネルギー企業の間だけではなく、世界の主要な海運会社や保険会社の間でも広がっており、ロシア産原油への関与を敬遠する動きが目立つようになった。
欧米の禁輸や輸入削減で行き場を失った日量約500万バレルの新市場をロシアは探さなければならないが、中国がそのうちの一つになることは間違いない。ただ、中国はロシアの足元を見て厳しい値引きを迫る可能性がある。
一方、欧米諸国はロシアに代わる原油の新たな調達先を探す必要がある。有力な調達先としてはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールの中東3カ国が挙げられよう。3か国の余剰生産能力は合計で日量約250万バレルだが、石油輸出国機構(OPEC)に属する3カ国が容易に増産に応じるかどうか不透明だ。イランとベネズエラの余剰生産能力は合わせて約150万バレルに達するが、対米関係がこじれている現状では新調達先としては望み薄だ。
世界の原油市場は1970年代の二度にわたる石油危機以来、最も厳しい混乱期を迎えている。
▲写真 ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と米国のアントニー・ブリンケン国務長官 出典:Photo by Thierry Monasse/Getty Images
◇対米連携
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