邪悪なロシアと日本を重ねる朝日新聞
Japan In-depth / 2022年3月22日 23時0分
《▼ロシアで多くの人が見ている夜9時のニュース番組。その機会を捉え、身を賭して訴えようと彼女は考えたのだろう。国営テレビの生放送中に掲げた紙には、短く強い言葉があった。「戦争反対。プロパガンダを信じないで。ここではあなたにウソをついている」▼テレビ局の職員である彼女は、警察に連行された。禁錮刑ではなく、罰金刑が早々と決まったのは、当局のあせりを示しているのか。あるいは重い罰がこれから待っているのか》
以上の文章は日本の政府の政策に反対した日本人男性とロシアの政府の政策に反対したロシア人女性とをまちがいなく同列に並べていた。だから日本の当時の中国との戦争は現在のロシアのウクライナ侵略と同じだという前提を示すわけだ。
いまどうみても邪悪としか思えないロシアのウクライナに対する無差別攻撃、そして民間の人間や施設をも組織的に殺戮し、破壊していくロシアの軍事行動は日本の往時の中国の国民党軍や共産党軍の戦闘とは相違点があまりに多い。であるのに日中戦争全体をロシアのウクライナ侵略と同一視しての記述はやはり日本の「悪魔化」である。過去の日本が現在のロシアと同じだとする根拠のない断定である。
この「天声人語」コラムはさらに「プーチン政権のウソ」を非難してから以下のように結んでいた。
《▼インターネットも規制を受けるが、何とかかいくぐっている人もいるらしい。ウクライナにいる家族や友人からも情報がしみ出す。<暁を抱いて闇にゐる蕾>。これも鶴彬の作品である。どうか夜明けが近からんことを。》
「天声人語」は以上の記述で終わっていた。現在のロシアと過去の日本とを完全に融合させた結びの記述なのだ。日本の鶴彬という男性とロシアの国営テレビ職員の女性とを一体にしている。ともに自国の残虐な戦争行為に反対したことが共通項だというわけだ。
だがこの一体化にも朝日新聞の言葉の詐術がある。鶴彬という人物を単なる川柳作家として描き、「石礫のような言葉の力が当局から警戒されたか、治安維持法違反で捕らえられ」と述べていた。ところがこの鶴彬というのは現実には激烈な反体制の共産主義者だった。当時、違法とされた共産主義組織の「日本共産青年同盟」の活動家だったのだ。
「日本共産青年同盟」は1920年代に日本の共産主義運動の代表たちがソ連共産党の国際中枢のコミンテルンから指令を受けて、日本国内に発足させた反体制の革命団体だった。当時の日本の国体を否定したから、違法とされたわけだ。鶴彬はこの団体の活動を日本陸軍の内部にまで持ち込んだとして検挙された。
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