反戦ロシア人の声を聞け 「プーチンの戦争」をめぐって その3
Japan In-depth / 2022年3月23日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・取材に応じてくださったロシア人女性・アンナさんのウクライナ侵攻への思い
・第三次世界大戦の瀬戸際に立たされている
・日本はロシア市民や日本経済に配慮しつつ、国際世論の力で停戦を実現させるべきだ
日本国内で戦争反対の声を上げ続けているロシア人女性が、取材に応じてくれた。
名前は仮に「アンナさん」としておく。
と言うのは、ロシアによるウクライナ侵攻後、かの国の法律も変わり、それまでは反政府デモに参加して警察に拘束されても、せいぜい10日間程度で釈放されていたものが、罰金(それもロシアの物価水準では、小さなアパートが買える金額の半分ほどにもなる)に加え最悪の場合は15年もの懲役刑が課せられる恐れが出てきたからである。
モスクワの日本大使館に勤務した経験がある私の知人からも、
「ロシアの情報機関は今、国外で政府批判を続ける人たちをあぶり出そうと躍起になっているみたいだ」
との忠告を受けた。
つまり彼女の身元が特定されると、ロシア外交筋から日本政府に対し、ビザを延長しないよう働きかけがあるなど、有形無形の迫害がなされる危険性がある。そのリスクを冒してまで取材に応じてくれた彼女の勇気には敬意を表する。
以下、質問者は林、回答者は「アンナ」というインタビュー形式で書かせていただくが、文責は林信吾であることを明記しておく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
――まず、あなたとウクライナという国との関わりについて教えて下さい。
アンナ 私はロシア国籍で母国語もロシア語なのですが、ルーツはウクライナにあるのです。少しややこしいのですけれど、両親はベラルーシで生まれ育ちましたが、先祖はウクライナ人で、今も親類縁者の多くはウクライナで暮らしています。親の代にロシアに移住し、私はサンクトペテルブルク、生まれた当時はレニングラードと呼ばれていましたが、そこで生まれました。まったくの偶然ですが、プーチン大統領とは同郷ということになります。
――でも、生まれながらにロシア国籍なのですね。
アンナ はい。16歳の時に初めてパスポートを取った時には、
「国籍・ロシア、民族・ウクライナ人」
などと書かれていました。その後しばらくして、やはり差別や偏見の原因になってはいけないということで、国籍だけ書かれるようになりましたけど。
――ロシア語とウクライナ語とでは、会話は通じるものなのですか?
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