日本外交の診断 兼原元国家安全保障局次長と語る その4 中国「千人計画」の危険性
Japan In-depth / 2022年3月28日 12時17分
写真)鄧小平(1979年1月5日)
出典)Bettmann/Getty Images
古森 現在、中国は「千人計画」によって世界中から優秀な人材をスカウトし、軍事研究を活発化させています。アメリカではかつて「ベスト・アンド・ブライテスト」(最も聡明な人々)と呼ばれた研究者たちの多くは、ソ連の軍事研究をしていました。ソ連の崩壊後、そういった学者たちは中国の軍事研究をしています。ただし日本の学者たちと異なり、中国側に雇われるアメリカ人学者はきわめて稀です。
兼原 中国の軍事技術は、宇宙・サイバーに関する技術を含め、この10年で急伸しています。この急激な成長スピードの裏にはカラクリがあり、世界中の先端技術をコピーすることで、基礎研究のプロセスをはぶいているのです。
科学技術は、基礎研究 ⇒ 応用研究 ⇒ 研究開発、というプロセスを経て社会実装されますが、研究者が長い時間をかけて骨身を削るのは基礎研究です。中国はその基礎研究を飛ばして開発された製品をコピーしているので、社会実装が早い。
古森 中国当局は「千人計画」だけでなく、中国人を世界中の名門大学に留学させています。高度な技術を身につけた中国人留学生は、祖国発展のために技術を持ち帰る。
兼原 日本の理系の大学院博士課程にいる学生のほとんどは中国人ですよ。中国人留学生は大使館とつながっています。中国人は国内法上、国家に情報を提供する義務を負っています。アメリカでは、中国人留学生が帰国した後にアメリカの研究棟とソックリな建物が中国に建設される「シャドウ・ラボ」が問題になっている。
古森 私は日本の大学院で中国人を教えたことがありますが、ハッキリ言って日本の学生よりも優秀でしたね。勤勉でもありました。
兼原 中国の軍事技術のなかには、日本の基礎研究をコピーしたものがたくさんあります。たとえば、最近話題になっている極超音速ミサイルは、1990年代に日本で風洞(ふうどう)実験を始め、良い業績を上げていたそうです。ところが、日本では軍事研究につながる技術開発はご法度でしたから、それ以上の研究はストップしました。しかしその研究には、中国人研究者が数多く参加しており、その技術が中国に持ち帰られた疑いがある。中国は最近、極超音速ミサイルの実験に成功し、アメリカ人を震え上がらせました。
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