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北朝鮮に虚を突かれたバイデン政権

Japan In-depth / 2022年3月31日 13時17分

同文書は冒頭の70行ほどでアジア太平洋地域でのアメリカとその同盟諸国への挑戦や脅威を総括していたが、その大部分は中国の膨張への警告だった。北朝鮮はなんと中国の後、「その他の主要な挑戦」という項目のなかで、「気候変動」、そして「新型コロナウイルス」の後に初めて登場するだけだった。しかもその内容は「北朝鮮は不法な核兵器とミサイルのプログラムを拡大し続けている」という文字どおり、一行だけだった。


この冷淡さは日本にとっては衝撃的だったといえる。北朝鮮は日本の方向に向けて新年に入ってからすでに11回も短距離、中距離のミサイルを発射したのだ。しかも「日本を核で海底に沈める」というような威嚇言辞を政府メディアで発信する。


北朝鮮のミサイルや核兵器が日本にとっての重大な脅威である現実は明白なのだ。だが日本の安全保障に責任を持つ同盟国のアメリカがその脅威を無視してきたようにさえみえるのである。


前述の「アジア太平洋戦略」という文書が発表された2日後の2月13日にはアメリカ、日本、韓国の外相会談がハワイで開かれ、北朝鮮の脅威も議題となった。だがそこでも「対北の抑止力を強化する」という言明が出されただけで、具体的になにをするかは明示されなかった。


バイデン政権は2021年5月には「北朝鮮政策の形成をだいたい終えた」と発表した。だがその内容については「現実的なアプローチ」と評するだけだった。その直後に同政権高官はこの政策について「オバマ政権の戦略的忍耐とトランプ政権の最大圧力の中間」という抽象的な特徴づけをした。


しかしその後もバイデン政権は北朝鮮の非核化という懸案について語らず、動かなかった。そんな状況への批判は新年になって超党派で広まった。


保守系の国際戦略問題の研究機関「民主主義防衛財団」上級研究員で朝鮮半島の安全保障専門家のデービッド・マックスウェル氏は1月下旬に発表した論文でバイデン政権の北朝鮮政策が空疎だと厳しく批判した。


同論文はバイデン政権の対北政策に欠けるのは「一貫した実務的な外交」「強固な抑止」「日韓両同盟国と連帯しての抑止」「人権問題重視」などと指摘した。この欠ける部分を合わせれば、後にはなにも残らない、つまり空疎、空白だというわけだ。


民主党系の大手紙ワシントン・ポストの外交問題コラムニスト、ジョシュ・ロギン氏も1月中旬、「北朝鮮を無視はできない」と題する論文でバイデン政権が北朝鮮問題への取り組みをあえて避けている、と非難した。


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