最後は中国カードもあり得る「プーチンの戦争」をめぐって 最終回
Japan In-depth / 2022年4月1日 11時0分
しかしそうなると、ウクライナとしては「国土の朝鮮半島化」という問題に直面する。こちらもまた、受け入れられる話ではなさそうだ。
CNNなど英語圏のマスメディアの報道では、ロシア軍はかなり疲弊しており、一部部隊は弾薬を放り出して敗走するなど、停戦に前向きなのも無理はない、と思える情報がしきりに伝わってくるのだが、英戦略研究所などは、一時的に戦線を整理し兵站を立て直す時間を稼いでいるだけで、プーチン大統領はまだまだウクライナの武装解除をあきらめていない、と見ているようだ。
かつて「撤退」を「転進」と言い換えて国民の戦意喪失を防ごうとした軍隊があったが、今次のロシア軍は、停戦交渉に前向きな姿勢を見せつつ、その裏ではさらなる構成の準備をしている、というわけだ。
ただし、今のロシア軍に玉砕、もとい、全滅覚悟で戦う気概がないとすれば、この戦略も成立しがたい。考えたくもない事態だが、そうなるとプーチン大統領に残された手段は、核による威嚇しかない。
ウクライナの大都市やNATOの補給基地に核攻撃を加えたなら、それこそ第三次世界大戦になってしまうが、海にでも落として威嚇するという手段がある。米国は、
「ロシアが生物・化学兵器を使用したら相応の対応をする」
と宣言しているが、核について今のところなにも言わないのは、色々な解釈が可能ではあるけれども、ロシアの「本気度」を慎重に見極めようとしている、と考えるのが、最も合理的ではないだろうか。
バイデン大統領やNATO加盟国の首脳たちの態度については、非難がましいことを言う人がいるけれども、様々な情報を総合する限り、第三次世界大戦=破滅的な核戦争だけは避けなければならないという前提で、ギリギリのところ努力している、との評価は可能であると思う。
ただ、努力は必ず報われるとは限らないのが国際政治の現実というものなので、トルコの仲裁が実を結ばなかった場合、どうするべきかをきちんと考えておく必要がある。
私の意見では、最後の切り札は中国カードだと思う。
保守派の論客たちは、我が国にとって最大の脅威である中国に、漁夫の利を与えるようなまねをするべきではないと主張する。言いたいことも分からないではないが、現状を冷静に考えるなら、ロシアによる「核の威嚇」というリスクを負うことなく、その侵略行為に掣肘を加えることができるのは、中国を置いて居ないのではないか。
▲写真 ローマのG20サミットに出席する王毅外相(2021年10月30日) 出典:Photo by Antonio Masiello/Getty Images
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