日本経済を元気にする経済政策 今こそ議論すべきではないか?
Japan In-depth / 2022年4月4日 14時4分
神津多可思(公益社団法人 日本証券アナリスト協会専務理事)
「神津多可思の金融経済を読む」
【まとめ】
・コロナ禍から回復する需要に供給が追いつかず、インフレ圧力高まる欧米先進国。
・日本の需要回復は弱く、歴史的に下限の実質金利で資金調達できても経済成長につながらない。
・AI、DX、グリーン化…コロナ禍後の日本経済が本当に元気を取り戻す金融・財政政策の議論を。
欧米先進国の経済政策では、インフレ率の上昇加速を回避する姿勢がはっきりしてきた。日本では、まだインフレ率がはっきり高くはなっておらず、そうした変化はない。
欧米諸国の経済では、コロナ禍から回復する需要に対し、供給がなかなか追い付かないことがインフレ圧力の高まりの原因の1つとなっている。
これに対して日本では、これまでのところ需要の回復がそれほど強くなく、したがって金利引き上げによる需要の抑制を欧米諸国のように急がなくても良い。
しかし他方で、これまでの経済政策で日本経済が元気を取り戻すことができていないことも事実だ。日本を取り巻くグローバルな環境が大きく変化しようとしている今、コロナ禍後の経済政策のあり方を改めて議論してみてはどうだろうか。
■ どうして欧米のインフレ圧力は高まっているのか?
インフレ率は、短期的には、マクロ経済の需要と供給のバランスが需要超過、あるいは同じことだが供給不足となっていると上昇する。これまでのコロナ禍の下で、需要は明らかに抑制されてきた。感染者数の減少傾向は世界的にはまだ確認されていないが、欧米先進国ではコロナとともに生きていく新しい日常へと舵が切られている。これまで経済を支えるために大型の財政支出が組まれてきた上に、正常化に伴って消費や投資がさらに出てくる。
他方、供給の方は、なかなかコロナ禍前に戻らない。それが、構造的な要因によるものなのか、あるいは今後、時間が経てば解消するものなのか、まだ議論ははっきりしない。
コロナ禍を契機に、家庭内での労働をどう家族で分担するのかが見直されているといったような根本的な変化が起こっているのだとすると、労働者がコロナ禍前のように職場に戻ることはないかもしれない。そうなると、一部の供給不足も解消しない。
もう1つのインフレ要因として、いわゆるグリーン化がある。これは、これまで無視してきた地球環境破壊のコストが、にわかに意識されるようになったためのコスト増と言える。したがって構造的なものであり、時間が経ってもなかなか解消しないだろう。
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