朝日新聞は自国の防衛を否定するのか
Japan In-depth / 2022年4月6日 23時0分
ウクライナの国民がロシアの侵略に対してみずからを守るために戦う。この行為に賛同や賞賛を送るのは山東議長だけではない。全世界の大多数の人間といってもよいだろう。正確な数字を示す世論調査が各国で実施されたというわけではない。だが私自身はもちろんウクライナ国民の自衛の戦争に感動を受けた。私の周辺の友人知人も同様にみえる。だから山東議長の「その勇気に感動」という言葉にも同調を感じた。「強いひっかかり」など感じるはずがない。
ところが朝日新聞は違うのだ。「天声人語」は上記の文章に続いて以下のように書いていた。
《▼侵攻する側は、よその国に人殺しに来ている。自分の国を守る側も人殺しをせざるをえないところに追いやられている。いま他国の政治家たちがなすべきは勇ましさをたたえることではない。戦争を終わらせるすべを探ることだ▼》
唖然とする記述だった。軍事力で侵略されて、つまり戦争を仕掛けられて、その攻撃を防ぎ、はね返し、自分たちの国家や国民を防衛しようとすることを「人殺し」だと断じるのだ。
戦争を仕掛けた側のロシアにしても、「人殺しに来ている」わけではないだろう。ウクライナを隷属させるという政治目的の達成のために軍隊を送り、ウクライナの官民を屈服させようとしているのだ。その結果、相手側を殺すことにもなってしまう。だが相手国の人間の殺戮を最大目的としているわけではないのは自明である。侵略全体としては、殺傷はその最大目的達成のための手段だといえる。
まして侵略された国が自衛のために戦うという行動を単に「人殺し」と断じる「天声人語」の思考は異様である。個々の国家にも、個々の人間にも自衛の権利は認められている。基本的な権利だといえる。国連憲章や世界人権宣言でもその種の権利は明確に認められている。国際社会でも、国連でも、国家が国民を守るために戦う自衛の戦争はその国家の責務だとさえみなされている。
だが朝日新聞のこのコラムは人間が自分の生命や生活を守るため、国家が自国の主権や国民を守るために抵抗することを単に「人殺し」として、否定するのだ。外部から他国に侵略し、武力を使ってでもその他国を支配する側に対して、抵抗するな、と命じるのだ。これこそ武力の威力、戦争を仕掛ける側の立場を全面的に認める、ことにつながるという点にこのコラムの筆者は気がつかないのだろうか。
一国が他国になにかを求める。その他国がその要求を拒む。すると最初の国は武力を使って、あるいは使うぞと威嚇して、その要求を突きつける。その要求は不当である。だから突きつけられた国は反対する。抵抗する。武力での要求には武力で反撃する。これはごく当然であり、自然な流れだろう。
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