大規模戦争犯罪に発展か 国際法廷のプーチン訴追困難の見方も
Japan In-depth / 2022年4月8日 13時26分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・プーチン大統領、他国の協力も有り、国際刑事裁判所に深刻な戦争犯罪を行ったとして訴追対象となる可能性大。
・ロシアは国際刑事裁判所の取り決めに批准していない為、訴追手続きに従う必要がなく、プーチン大統領らロシア政府、軍首脳の指示・命令、黙認などを立証するのは容易ではないという厳しい見方も。
・プーチン大統領は世界で戦犯扱いされ、今後大統領としての職務遂行は困難に。
ロシア軍撤退後、ウクライナ国内で市民の惨殺遺体が多数発見された事件の被害はさらに増える見込みといわれ、大規模、深刻な戦争犯罪に発展する可能性が強くなってきた。
ウクライナ侵略に伴う非人道的行為を捜査している国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は、今回の虐殺も訴追対象とするとみられるが、プーチン大統領ら、ロシア政府高官の訴追は困難という厳しい見方もなされている。
■証拠隠滅に移動式火葬装置
ウクライナのゼレンスキー大統領は、キーウ郊外ブチャと同様の虐殺が他の都市でも起きている恐れを指摘、「ロシアは事実を歪曲して暴力の跡を隠ぺいしようとしている。インタビューを脚色、音声を再編集し、国民を殺害したのは他の誰かだとみせかけようとしている」と隠ぺい工作を強く糾弾した。
また、ブチャ同様、多くの犠牲者が出ているとみられる東部、マリウポリの市議会も、ロシア軍がやはり証拠隠滅のために、移動式火葬装置を運用しているーことを明らかにした。
■縛られて口に銃弾
ロイター通信などロシア軍撤退の後、ブチャに入った西側メディアによると、犠牲者のほとんどが、ジーンズ、ジョギングパンツ、スニーカーなど普通の市民の服装。軍服姿はなかったという。
後ろ手に縛られて口の中に銃弾を撃ち込まれた遺体や、買い物の途中に殺害されたのか、ショッピングバッグを握りしめたままの遺体が発見されたことなどは、偶発的ではなく、意図的、無差別に市民を狙った殺人であることをうかがわせる。
「殺害、拷問、性的暴行のための組織的な犯行だ」(アメリカのブリンケン国務長官)の指摘が現実味を帯びて響く。
ブチャでの惨状が明らかになった直後、バイデン米大統領は、「戦争犯罪だ。プーチンは戦犯」と非難。
イギリスのジョンソン首相は4月7日、「プーチンがウクライナで行っていることは、ジェノサイドにしかみえない」と述べ、組織的、計画的な大量虐殺を意味する強い表現を用いて〝告発〟した。
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