国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
Japan In-depth / 2022年4月22日 12時57分
国産防弾装備は心もとない。供与した防弾装備をまず88式鉄帽2型からみていこう。88式鉄帽2型は2013年から採用されている最新型で陸自でも十分に普及していない。だが88式は砲弾の破片に近似した弾速の拳銃弾が命中した際、10センチほど凹む。貫通しないから問題ないというのが陸自の考え方らしい。だが恐らく頭蓋骨は5センチ程度陥没するだろう。これで隊員が無事な訳がない。対して同時代のアメリカ軍のそれは、その拳銃弾よりも弾速が速いトカレフ拳銃弾で撃たれても凹みは2.5センチ以内である。
写真)88式鉄帽2型と防弾チョッキ3型
提供)清谷信一氏
無論ヘルメットが想定しているのは主として砲弾の破片などからの頭部の防御だが、防御力が劣っていることは間違いない。貫通しなくとも、10センチもヘルメットが凹めば頭蓋が潰れてしまう可能性は高い。
また他国では最近はヘルメットに、アフガニスタンなどの戦訓から耐衝撃用クッション製の小型パットを多数ベルクロで張り付けるものを採用している。これは被弾時に外傷がなくとも脳に大きなダメージを受けることがあるからだ。
写真)仏軍の最新型ヘルメット。衝撃吸収パッドを採用している。
提供)清谷信一氏
このタイプは爆風の侵入を防ぎ、被弾時の衝撃を大きく緩衝し、脳の受ける損傷を極小化できる。またクッションのサイズも貼る場所も選べるし、新型のクッションが出れば容易に貼り替えることもできる。だが、88式鉄帽の後継ヘルメットは住友ベークライトが開発し、近く配備予定とされているが、関係者によるとこれまた未だにハンモック式を使用しているという。軽量化はされているが防御力は低く、小銃弾には耐えられないようだ。
その背景には、戦闘ヘルメットを想定していないJIS規格にあわせる必要があるからだという。防衛省は実態に即さない法令の変更に消極的で、現在の法令にあわせて不合理な装備を開発することに違和感を持たないという文化がある。
防弾ベストも設計が古い。現在の最新型の3型でも先進国レベルに達していない。2型だと、ポーチなどを装着するためのMOLLEシステムの規格も世界中で普及しているアメリカ軍の規格ではなく、陸自独自の規格を採用している。他国のものを採用できないようにするための「非関税障壁」なのだろう。
またボディアーマーに挿入される防弾プレートも珍奇な日本独自の形状であり、NATOなどが採用している規格ではない。歪な形であり、車両の運転などの際には邪魔になる。これまた外国製を排除するための「非関税障壁」が目的だと思われる。このため海外製品と比較されることもないので、ここでも性能、価格の両面に置いて競争原理が働かない。
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