1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2

Japan In-depth / 2022年4月23日 11時0分

 大野元裕参議院議員(現埼玉県知事)もこの件を国会で追求し、平成28年度第三次補正予算において、15万9千セットの向上型救命救急用具調達が決定された。今だから言うが実は大野氏は当時筆者主催の勉強会のメンバーであり、筆者らがあれこれお手伝いをした。


 つまり陸自は実戦で隊員が死傷することを前提に、衛生装備を開発調達してこなかった。


 隊員が死傷しない前提の組織が、戦時の隊員の命を救う防弾装備を真剣に考えるはずがあるまい。


 更に指摘するならば陸自には我が国からODAを受けている発展途上国の軍隊でも標準装備である装甲野戦救急車すら存在しない。これらの事実からすれば、率直に申し上げて陸自は隊員が死傷する実際の戦争、戦闘を想定していないとしか、考えられない。陸自にとっては中隊規模で行う演習が「実戦」なのだ。


 いうなればいうなれば実態は国営サバイバルゲームチームに過ぎない。


 そもそも海外の防弾装備の実態もろくに調査していない。筆者はこれまで何度も報じてきたが、2008年度の防衛省・技術研究本部(技本)の海外視察費用は僅か92万円。これで6名を派遣している。基本相手国の招待だ。しかもこれを陸上装備の開発官(陸将、諸外国では中将に相当)等の卒業旅行に使っていた。つまり海外視察は外国のカネで行く「役得」「ご褒美」の類であり、情報収集のためという認識が極めて低かった。技本ではまともな情報の収集や解析が行われているとは言いがたい。


 この件は筆者が長年個人名を上げて何度も記事化してきたため、財務省も妄想で役に立たない装備を作るよりは、と海外視察予算を大幅に増やすことを認めている。この視察予算は一桁以上増えて、また然るべき担当者が視察に行くことが増えてきている。


 88式鉄帽2型や防弾チョッキ3型はこの「卒業旅行」時代に開発された装備だ。まともに海外の先端情報を把握して、真剣に開発されたとは言い難いだろう。


 これらのことから日本の防弾装備は岸防衛大臣の「装備品につきましては、わが国でしっかり試験をした上で、わが国の基準に合わせております」という認識は相当ナイーブであるし、自衛隊の実態を把握していないということだ。


 あるいは自衛隊自身も国産防弾装備の低性能を知っているので、調査をするとそれが露見するから調査をしないという「大人の事情」があったのかもしれない。もしそうならば、それは戦闘を行っているウクライナに対する背信行為でもある。またそのつけは将来自衛官の血で贖うことになる。


 このような敵を知らず、己も知らない非現実的な認識のポリシーで装備を開発・調達することは、自衛隊を自ら弱体化させることにほかならない。


 自民党政権は防衛省の予算をGDP比2パーセント、現在の2倍まで引き上げようとしているが、このような非現実的な組織に単に予算を二倍にしても有効に使用されるはずがない。予算倍増以前に自衛隊は軍隊の常識を学ぶ必要がある。


(終わり。その1。全2回)


トップ写真)キーフ(キエフ)郊外を視察するゼレンスキー大統領 2022年4月4日


出典)ウクライナ大統領府


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください