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意外と深い「時そば」の世界観 方言とソウルフードについて その4

Japan In-depth / 2022年4月26日 7時59分

 これが長崎名物・卓袱料理の起源なのだが、やがて京都で、松茸や山芋など、今の感覚でもかなり豪華な具を乗せたうどんを「しっぽくうどん」と称するようになり、それがさらに江戸の蕎麦屋に伝わって「しっぽくそば」となったらしい。ただ、江戸時代の文献には「しっぽくそば」という名前だけ記され、どのような具が乗っていたのか、よく分からない。噺の中では、厚切りのちくわが入っていて、これまた世辞の対象となる。


 つまり、当時としては結構モダンな食べ物だったことが分かる。これを、蕎麦好きのためのサイトと称しながら「ちくわを入れたかけそば」と書いていた人がいる。薬味のネギ以外に、なにか具が入っていれば、それは「種物(たねもの)」であって、断じてかけそばではない。本を書く前に本を読め、という格言もあるが、この程度のことも知らない人に蕎麦についてのウンチクなど語って欲しくない。


 話を戻して、お待ちどうさま、と出された時、


「お待ちどうじゃねえや。早いじゃねえか蕎麦屋さん。江戸っ子は気が短けえからな」


 などと、また褒める。江戸っ子に限らず、およそファストフードを注文したら、待たされるのは嫌いな人が多いのではないか。私も、評判のラーメン屋で、やむを得ず行列したことはあるが、基本的には、そこまでして食べたいとは思わない方だ。


牛丼の吉野家のキャッチフレーズは「早い、安い、旨い」であったが、実はその裏に、


「生娘をシャブ浸けにするように、田舎から出てきた若い女性を牛丼中毒にする。男に高い食事をおごってもらえるようになると、牛丼食べたがらなくなるから」


 などというマーケティング戦略が隠されていたことを、最近知った。マーケティングに関する講演会でこんなことを言った常務は解任されたらしいが、当人が、シャブ(覚醒剤)はともかく、なにか悪いものでも食べたのではあるまいか。






写真)牛丼 (当時、BSE発生により米国産牛肉の輸入に関する日米協議が行われた) 2004年1月23日


出典)Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images


 またしても『時そば』に話を戻して、新しい割り箸を供され「きれいごとで、気持ちがいいや」と言う。


 少し前、森林資源保護の観点から割り箸はよろしくない、などと言われ「マイ箸」を持参するのがブームになったことがある。その際、


「割り箸は間伐材の再利用なので、むしろエコなのだ」


 という反論がなされた。しかし、江戸時代では木材と言えばまずは建材、そして間伐材なども、もっぱら燃料として利用されていたので、客の一人一人に割り箸を出すのは、たしかにコスト面での負担がバカにならなかったろう。


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