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津軽弁で押し通すアイドル 方言とソウルフードについて その5

Japan In-depth / 2022年4月30日 9時10分

「沖縄の人に、あんたは〈てーげー〉だって言っちゃいけないの?」





と質問したところ、真顔でたしなめられてしまった。





「林さん、それ絶対ダメですよ。ケンカになっちゃいますよ」





ところが、ほどなくして、沖縄の大学を休学して東京の劇団のオーディションを受けまくるべく上京してきた、という女の子と知り合うことがあって、その話を聞かせたところ、大笑いされてしまった。いわく、





「信じらんない笑。てーげーって言われて怒るような人、ウチナンチュじゃないっすよ」





東京の男としては、ボクシングの渡嘉敷がヒゲをたくわえたような居酒屋のマスターの言うことを信じるか、安室奈美恵にちょっと似た女優の卵の言うことを信じるかという、結構難しい選択だった……という話ではなくて、ここまで来ると方言も外国語と一緒だな、と思った。これは差別的に言っているのではなく、正確な理解に至るのはなかなか難しい、という意味なので、誤解なきように。





またまたそれで思い出したが、元「りんご娘」(9月から新メンバーで活動再開だとか)のメンバーが津軽弁で押し通しているのは、やはりご当地アイドルだけに一種の「営業用」ではないか、などと言われていることについても、くだんの大学教授は、





「まず間違いなく、その通りでしょう」





と断言した。彼に言わせると、津軽弁のイントネーションは、あまりにも標準語とかけ離れているので、かえって標準語を話す際にも妙なイントネーションにならないのだとか。





こうしたことを踏まえて、方言を大切にした方がよいのかと聞かれると、私としては、





「こうあるべきだ、と結論を下すことなどできない」





と言う他はない。





まず、私自身は、たとえ地方で暮らしても、自分の話し方を変えようと思ったことはないので、地方から上京してきた人に東京風の話し方を強要する考えはない。とは言え、言葉がコミュニケーションの手段である以上、日本語なら日本語の、ひとつの基準値のようなものがないと(それを標準語と呼ぶのが適当か否かは、また別の議論になるとして)、困ったことになるのではないか。





西洋の伝承によれば、人間がその昔、一致団結して天まで届く「バベルの塔」を建設しようとしたところ、神が怒ってバチくれることにした。その神罰というのが、「互いに言葉を通じなくさせる」ことであったというくらいなもので。





次回、諸外国の方言事情とソウルフードの話を。





(その1、その2、その3、その4)





トップ写真:青森県鰺ヶ沢近郊の果樹園(1990年10月1日) 出典:Photo by Bohemian Nomad Picturemakers/CORBIS/Corbis via Getty Images




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