対台湾政策を大転換した米国
Japan In-depth / 2022年5月14日 12時12分
さて、今年4月、ロイド・オースティン米国防長官は魏鳳和国防相との電話会談で「米国は『一つの中国政策』に引き続き関与すると述べた」(e)という。けれども、これは米国が単に“二枚舌”を使っているだけではないか。
今まで米国は世界に向かって、対台湾「曖昧戦略」を喧伝してきた。しかし、それはあくまでも“建前”に過ぎないだろう。なぜなら、1979年の「台湾関係法」では、明快に台湾人の生命・財産・人権を守ると謳っているからだ。
実は、第2条(B項)の(4)・(5)・(6)の部分しか読まないと、米国の意図がよくわからない。表現が曖昧だからである。だが、(C項)の後段には「台湾のすべての人民の人権の維持と向上が、合衆国の目標である」(傍線―引用者)(f)と書かれている。この部分が最も重要ではないか。米国が台湾人の人権を守るという場合、その前提として、まず彼らの生命・財産を守らなければならない。そうでなければ、台湾人の人権を守ると言っても無意味だろう。
ところで、なぜ米国は「一つの中国」政策をやめたのか。その背景には、米国の対中強硬路線―北京五輪外交ボイコット、中国企業のブラックリスト化、新疆ウイグル自治区でのウイグル人強制労働による生産物への輸入制限法施行(g)等―が考えられる。
他方、米国人の中国に対するイメージの悪化も関係しているのかもしれない。「中国に対する否定的な見方が、この1年間で小幅に増加した。(中国に対して非常に否定的な見解を持つ40%を含め)10人に8人〔82%〕が中国に対して否定的な意見を持つ。これは2021年と比べて6ポイント増加し、2020年、この質問開始以来、最も高い数字となった」(h)という。
<注>
(a)『VOA』「米国が『台湾は中国の一部』を削除し、重大なメッセージを送る」(2022年5月9日付)
https://news.creaders.net/us/2022/05/09/2481826.html
(b) U.S. DEPARTMENT of STATE “U.S. Relations With Taiwan”(MAY 5, 2022)
https://www.state.gov/u-s-relations-with-taiwan/
(c)『自由時報』「AIT:米国は『台湾独立』の公民投票を支持しない」(2019年2月14日付)
https://news.ltn.com.tw/news/politics/paper/1267331
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