シンガポール、食料自給率3割アップ狙う
Japan In-depth / 2022年5月17日 18時0分
⑤海水面の上昇から海岸線を守る保全計画の策定。2030年までにカロリーベースの食料総合自給率を30%に引き上げるといったレジリエント(強靭)な未来の構築を掲げる。
それは、1965年にマレーシアからの分離独立を迫られて以来とってきた生き残り作戦と同様に大規模なもので、機を見るに敏な特質を生かした国造りの再生を狙ったものといってよい。
シンガポールの農地は国土の1%未満。葉物野菜で国内需要の14%、鶏卵で同26%、魚で同10%を賄っているに過ぎない(2019年シンガポール食品庁=SFA調べ)。一方、人口は1990年に300万人台を突破、2000年には400万人台に乗り、2020年では約569万人(うちシンガポール人・永住者は404万人、国連の世界人口ランキングでは590万人)となっている。人口抑制策の解除、外国からの優秀な人材誘致などがこの人口増の要因とされている。食料需要は高まり、それをこれまで世界170の国・地域からの輸入で吸収してきたが、コロナ禍に伴うグローバリゼーションからローカリゼーションへのパラダイムシフトの中で食料の安全保障体制強化が急務になってきた。
写真)シンガポールのウェットマーケット(2020年3月28日、シンガポール)
出典)Photo by Suhaimi Abdullah
「30×30」でもまた、同国の機敏な特質は生かされようとしている。単に食料安全保障面から食料自給率を引き上げるだけでなく、世界的に注目されているフードテック、アグリテック分野での研究開発拠点化、投融資センター、人材育成、新産業育成などと複合的な成果を狙っている。
SFAが「30×30」のモデルケースにしようとしているのが、マレーシアとの国境であるジョホール海峡に面するリムチューカン地域(約17平方キロメートル)の再開発。ここには、農場、養鶏場、養魚場などがあり、昨年5月から6か月間、同地域の一定部分(同国ではほとんどが国有地で、ここのリース期間は20年が多いという)の再開発に関し、農場関係、建設関係、食品関係、インキュベーター関係、ソリューション・プロバイダー、一般市民、政府機関、ナンヤン・ポリテクニクなど教育関係、企画企業関係からの代表者がオンラインを含めた会合に参加し、マスタープランづくりの議論を交わした。すでに、その報告書は出されている。2023年までに具体的なプランが出されることになっている。この地域では観光農業も一部で行っている。
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